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イマサラ

腐向け/R15/DRRR!!・K66・TIGER&BUNNY中心/いろんな妄想ダダ漏れな欲望全開。

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#01:バーナビー/カリーナ

[メインキャスト]

瑞波真琴(みずなみまこと) / 国籍:日本
NEXT能力:現段階、詳細不明

兎 【僕はアナタが嫌いです】
薔薇【私はアナタが好きですっ!!】


自分でもちゃんと自覚はある。


「あのなぁバニー、お前いい加減にしろよぉ?」


僕は。


「アナタの説教なんか結構ですよオジサン」



真琴さんが嫌いだ。





●#01●





「ったくお前さぁ、真琴の何が気に食わねぇんだよ。アイツがお前に何かしたのか?」
「別に何も」
「バぁニぃ…」
「バーナビーです。アナタは僕に話しかけるより、もっと『物を壊さない戦い方』でも考えたらどうです?」

僕の言葉にオジサンはまだ何か言いたげだけど、結局言葉に出さなかった。僕は正論を言っただけだ。
今日のロイズさんからのお小言はいつもとタイプが違った。
勿論オジサンはオジサンでいつもの『いつでも辞めてくれて構わないんだよ?』とは言われてたけど。
【『瑞波真琴』と仲良くしてくれ】、と。
正直僕までこんな事を言われるなんて思わなかった。

「だったらお前は『真琴と仲良くなる方法』でも考えやがれっ!」

乱暴にデスクに戻ったら言い返されたけど僕は言い返さない。
瑞波真琴。NEXT。僕達ヒーローが全員一斉に対決しても一分も掛からず倒す巨大な力を持っている『らしい』。
【ナンバーゼロ】と言う最後で最強の隠し玉。戦闘にも出なければ滅多に表にも出ない。
彼は強い『らしい』けどヒーローじゃない。【別枠】の存在だ。戦うことはない。
僕がヒーローになるまで知らなかった存在だ。アカデミーでも教わらなかった。一般市民には完全に伏せられている。

  そして能力が一体何なのか、未だにハッキリと教えて貰ったことはない。

ただ、桁外れに強い『らしい』。だけど戦っている姿の記録はない。そもそも彼はヒーローじゃないから、戦わない。
それだけ存在は隠されている。


「…なぁ、バニィ…」
「口より手を動かしたらどうです?」

僕が初めてニューヒーローとしてのスピーチとパーティの時に初めて彼を見た。その時はアチコチのスポンサー達に埋もれたいた。
面倒そうに挨拶をすませて見えたと思ったらツナギ姿にTシャツ。決してパーティに来たわけじゃないのは一目瞭然だ。
この街じゃ目立つ黒髪に黒い目。ユニセックスな顔立ち。髪は全く整えてないのに、とにかく綺麗な顔をしていた。
その後は他のヒーロー達が彼に集まった。そして彼はやっと笑った。
顔パスで入ったにしても、正直に何者かと思った。


『まっことー!そんな格好で来て良く入れたね?』
『仕事終わりだもんで。てかキッド、抱きつくの良いけどお前のヘッドパーツすげー痛い。さっきから真琴さんの鳩尾にモロ入ってんだわ…』
『真琴だってちゃーんと正装すればもっとイイ男なのにぃ。勿体無いわねぇん?いつでもアタシがプレゼントするわよん?』
『出ーたよセレブ発言。【素っ裸で採寸させてくれればv】って事だろ?ツナギ楽だもん汚れていいし』
『ここは一応ドレスコードがしっかり張られた場所だぞ?良く受付で通してもらえたな』
『名前で通ったけど格好的に【レンタルでも着替えてくれ】って言われたー。つか【マスクにスーツ】って姿はかなり笑えるんだけど笑っていい?』
『もう表情から笑ってんだろうが!てか…んじゃなんでそのまんまなんだお前?』
『【着替えるくらいなら帰る】っつったら通してくれた。…つかさ、今さらなんだけどそんなに大事なパーティなのか?ただの新人発表会にしては豪勢な…』
『え、じゃあ真琴さんってルーキーの事何も知らずに来たんですか?あとこれ、ノンアルコールのシャンパンです!良かったらどうぞ』
『ブルーローズ、お前は将来いい嫁になる。ありがとな?キッドもこういうさりげない気遣い大事だぜぇ?一発で男オちるからスキルとして身に着けとけよ?』
『むぅ…じゃあボク何か食べ物取ってくる!!真琴何食べたい!?』
『ざーんねん。真琴さんはもう帰りまーす。テヘぺロ☆』
『うざっ!?てか真琴ってなんかボクにいっつも冷たくない?!今も放してくれないしさぁ!後ろからじゃ顔見えないよ!』
『【可愛がってる】と言い換えろ。あとお前のヘッドパーツはただの凶器だから放さないだけ。危ないの。オレはさっき鳩尾クラッシュして今も地味に痛ぇの』
『バイソンさんだって危ないじゃんか!角だよ?』
『バイソンは身長の関係上全く問題有りません、まる。あとお前、オレが好き過ぎ。いきなり抱き着くってどんだけだよロリコンだと間違われるだろうが』
『避けないソッチが悪いんだよ!チビを馬鹿にすると痛い目に合うんだからね!?』
『もう合ったっつの…十分痛かったわ。お前の新技【ヘッドパーツビンタ】な?大抵の一般人なら病院送りに出来る』
『真琴ムカつくー!!いっつもボクのこと馬鹿にして!!』
『はいはいキッドもそんなに騒がないの。真琴からの歪んだ愛情表現よ。愛されてんのv』
『そゆこと。んじゃオレ帰るわ』
『真琴君、もう帰るのかい?まだ来たばかりだしバーナビーくんにも挨拶していないのに』
『こんなギラギラ発表会でツナギの腰履きヤローに挨拶されてもあっちのメンツに関わる。あ、取りあえず虎徹。首繋がって良かったな?』
『ギリギリな。てか真琴ってば俺を心配してくれてたとか?やだオジサン感激なんだけど!』
『そりゃ子持ち37歳でのリストラってリアルに途方に暮れるしな。男やもめの切なさ全開だろ』
『あいっ変わらず可愛くねぇなぁ。傷心のオジサンにそんな事言いやがって悪魔かお前は!!』
『うわっ!!ちょっ!うっはっひゃはは!!やめっ!ちょ、くすぐんなおまっ!!つか他もなに参加しっ、ひー!ダメダメマジ無理っ!!』

ヒーロー同士の馬鹿馬鹿しい馴れ合い。スポンサー達も止めない。
…こんな関係にはなりたくない。鬱陶しい。
僕の視線に気付いたのか『主賓に嫉妬されるから帰るわ』と、僕をチラッと見て彼は出ていった。
挑発するように笑ってたけど、全く期待をしていない眼。僕の愛想笑いなんか完全に見透かした眼。興味のない…
気に食わなかった。
それが『瑞波真琴』との初めての顔合わせだった。

「仲良くなる必要性が僕には分かりませんね。馴れ合いでヒーローをやるつもりはありませんし」
「後半は俺に言ってんだろお前…」


   僕はきっと、真琴さんが嫌いだ。
   『きっと』だなんて曖昧なのは、「どこをどう、何が?」と聞かれたらハッキリ言えないから。
   そうなると【存在】が嫌いなんだろうな、と思う。
   肌に合わない。多分そういう生理的な問題なんだろう。


「…最近トレーニングルームに来ないからか?」
「違います。『仕事で来れない』と聞いていますから」

アニエスさんからもヒーローになる際に一番最初に言われた事。
【瑞波真琴を絶対に怒らせるな】と。
だったらその瑞波真琴についてもっと情報をくれればいいのに『自分で調べろ』。
どんな人間かと言ってもオジサンと同じく日系で背もそこまで高くないし、身体の線も細くてとても戦闘向きには見えない。
シュテルンビルドじゃ珍しいアジア系の中でも【純日本人】。真っ黒な髪に真っ黒の瞳。高校生くらいかと思ったら僕より歳上だった。正直ソコは吃驚した。
そんな彼にスポンサー達もHIRO-TVも頭が上がらない。マーベリックさんでさえ彼には丁寧に挨拶をする。
こんな一瞬で捻れそうな程華奢な身体の癖に『僕達よりも強い』だなんて信じられる訳が無い。
…どこかの金持ちの道楽や茶番としか思えない。正直今でも気分が悪い。

「『何の仕事』かは知りませんけど」
「それは知らなくていーんだよ…」
「そうですね。僕には関係有りませんし」

真琴さんは正直謎だ。本業だって本当は何をしてるんだか。
口癖は『オレ、一般人だから』。だけどヒーローコールのPDAは持ってる。色は黒。ただし音もバイブ機能も無いらしい。
その癖にヒーローに出動要請のあった事件があったら、大体一週間以内にはトレーニングルームにやって来る。
そしてトレーナーでもないのに全員に通常トレーニングに『ペナルティ』を付けてくる。
獲得ポイントとは関係無い独自の計算でのペナルティ。

「そういう言い方すっから真琴も『お前のこと関係無い』って拗れるんだぜ?ガキの喧嘩じゃねぇんだからよぉ」
「なら言い方を変えます。『プライベートに踏み込むつもりはありません』。これでいいですか?」

皆から好かれてる。そして怖がられてもいる。大人達はあの人が【自分達から離れる事】に酷く恐怖を抱いている。
いつも笑ってて、たまに差し入れをくれたり、TVスタッフ達といたり。真琴さんの周りには人が集まる。
勿論内容に興味は無い。人当たりが良いのは見て分かる。だけど視界に入りすぎる。

だから嫌いだ。
僕は真琴さんが疎ましい。
ただそれだけのこと。


「あんな子供みたいな性格で良く『ナンバーゼロ』だなんてやってますよ。何処の企業の何の道楽なんだか…」

歳上の癖に子供っぽいからベテラン組と一緒に悪戯ばっかりして。
パフォーマー気質。どれだけ険悪でも真琴さんが来るだけで場の空気が変わる。オジサンもだし、日系ってみんなそうなのか?
コッチ(ヒーロー)の苦労も知らないでいつもヘラヘラ笑って楽しそうに…

バキっ!と隣からペンが折れる音がした。
声に出てたのか。オジサンがキれたな。

「バニー、お前さぁ…」
「バーナビーです。何ですか」
「何を考えようがお前の自由だ。悪口も何でもな。だけどそれを線引きせずに平気で『口に出す』お前は最低だと思うぜ」

怒鳴りはしない。諭すように、軽蔑するような低い声で。

「…………」
「そんな【子供みたいな性格】のヤツ相手に面と向かって言わずに陰口叩くほどチキンか?何で真琴にそうやって直接言わねぇんだ」
「言う価値も無いと思って」
「【ナンバーゼロの正体が分かんねぇ】。それだけで、良くソコまで真琴を嫌えるな?」

真剣な声色のオジサンの方を見れば、これがまた真剣な表情。
何を勝手に怒ってるんだか。
そもそも『ナンバーゼロ』が何をする機関かもコッチは分からないってのに。

「そう言われても、僕は真琴さんが庇われる理由も分かりませんから。あの人の事を誰も教えてくれないのはソッチですが」
「お前はまだ一ヶ月…それもほんの極一部しか見てねぇのにアイツの事を悪く言うのは俺が許せねぇ」
「それは人情の厚い事で結構ですね。バディの僕より真琴さんに肩を貸すのは少しショックですが」
「茶化すんじゃねよ。……話せるならとっくに話してんだよっ」
「なら話せばいいじゃないですか」
「『自分で調べろ』って言われてんだろ?あいつにスポンサーが付いてねぇ事くらい知ってんだろうが。どこからも蹴って、自分の意志で動いてんだよ」
「一般市民の慈善行為と受け取ればいいと?随分と慈悲深い方ですね」
「…お前が勝手に捻くれてんのは結構だが新米の癖に『俺の仲間』を勝手に評価すんじゃねぇ!!」

一発デスクを殴ってオジサンの視線はモニターに戻った。
知るわけがない。隠しているのは向こうだ。調べるつもりも毛頭ない。
いつも笑って、ヘラヘラして、騒いで、それだけ。
人を一人嫌いになる事が、そんなに悪い事なのか?
そんなに一人を嫌う事がいけない事なんだろうか。











「オラー、テメーら瑞波さんちの真琴さん登場だぞー!みんな寂しかっただろうから今から存分に慰めてやるから集まれー!!」

真琴さんがトレーニングルームに入ってきた。
いつもだらしないラフな服装かカラーツナギに編み上げ鉄板作業ブーツ。そして片手に書類。
何処かの清掃作業員と変わらないような格好が真琴さんにとっては『外着』らしい。

「相っ変わらず煩い登場ねぇ真琴。っていうかアンタ仕事は?」
「ちょっと時間的に後回しが効くからコッチ来た。裁判まだだしな。大体は終わってる」
「いつもお疲れ様vご褒美にアタシが慰めてあげましょうかしらv」
「今猛牛に突撃されたらオレマジで昇天するわ…嫉妬されるから結構だっつの…」

酷い顔色に凶悪な表情。
それに足取りはふらついている。

「ほーれ、いるだけさっさと集まれ!!今回のお前ら酷ぇぞマジで。オレを過労死させるつもりだったら張っ倒す!!」

気分を入れ替えたのか、ドカッ!と休憩用のソファの真ん中に陣取って、本当に機嫌悪そうにPDAの映像と書類を再確認してる。
コッチといえばザワつきながら急いで真琴さんの方に集まる。
真琴さんは機嫌と表情がほぼシンクロしているタイプだから分り易いと言えばそうだけど、悪い時もそのまま出すから面倒臭い。


「おーいー顔色悪いなぁ。真琴お前無理してねぇか?」
「虎徹、撫でながら揺らすな睡魔に負ける…。てか『誰かさん達』のせいで無理しなきゃいけねぇ状況に追い込まれたんだよ巫山戯んなよ超眠ぃわオレに謝れ全員」

全員が苦笑するしかない。
ワンブレスで良くそこまで一気に悪態が付けるものだ。

「オレはコレを報告したらカリーナ拉致って駅前にオープンしたワッフル屋に行くからな」
「やったぁ!私まだソコ行ってないんですよ!!是非お供します!!」
「おう来い。奢りだから気にせず食えよ」
「真琴ずるいよ!ボクも行きたいのにぃ!!」
「ダメー、今日はその店『カップルデー』だ。お前とオレじゃ犯罪の匂いしかしないからアウト。イワンとセットでならカップルに見えるしそれでいいなら来るか?」
「うぇっ!?ぼ、僕ですか?!」
「じゃあ折紙さん付いてきて!真琴って今日車?」
「バイクー。カリーナは後ろ乗っけてくから、お前等は食いたきゃ走って付いて来い」
「…何でいっつも持ち上げてから一気に突き落とすかな真琴って。付いたら汗だくの距離じゃんか!!そんなので入れないよ!!」
「だろうな。はいザーンネーンv」

相変わらずキッドを苛めるのが好きらしい。なんか無意識に標的にしてるっぽいけど。
キッドも普段は大人びてしっかりしてるのに、真琴さんの前だと随分甘える。

「…………」
「ちょっとホァン無言で怒らないで雷出てるっ!私チラシ持ってるから!お土産買ってくるから食べたいのあったらメールして!?」
「だって真琴が酷いんだもん!!」
「落ち着きなさいって。酷いのは真琴の顔色の方でしょ?カリーナも、この子まだ仕事終わりきってないし倒れないように見てて」
「倒れたら喜んで担いでくるわよ!真琴さん、お姫様抱っこですからv」
「虎徹じゃねぇし、しかもJKにそんなんされたら死にたくなるわ…」
「俺も好きでされたんじゃねぇわ!ほじくり返すなよ!!」
「しかも公共の電波で流れるしな。楓ちゃんとポジ変わってやれよ」
「ぐっ…楓はバニーにゃ渡さん!!まだまだ俺のだ!!」
「別にくださいと一度も言っていません」
「んだとっ?!楓の可愛さを知らねぇくせにいっちょ前に言いやがって!!」
「まだ10歳にも満たないお嬢さんとお付き合いという僕に対する酷いロリコン妄想、いい加減止めて貰えませんか?」
「二人とも喧嘩は良く無い!そして良くない!真琴くんが居る時には最大級に良くないから止めよう!」

そう言われてスカイハイさんに割って入られた。
オジサンはどうでもいいけど…スカイハイさんが、焦ってる?
真琴さんがキれたらどうにかなるとでも言うのか?KOHが焦るほど?

「真琴さんが甘いもの食べてる時の顔って超可愛いんだもん楽しみー!」
「まぁソレは言えてるケド。幸せそうに食べるものねぇv…餌付けしたくなるわ」
「ハイそこ可愛いとか煩い廊下に立たすぞコラ。『餌付け』とかネイサンが言うと何か洒落にならんからヤメれ…」
「んふふっv『アダルト』に可愛がってあげるわよぉ?」
「悪ぃけどオレは躾がなってねーから存分に噛み付くぜ?…って事で報告。心して聞きやがれったく…」

一つ大きく欠伸をした後、少し解れてた表情が一気に厳しくなった。
目の下のクマも酷い。本当にどんな仕事してるんだ?


「一昨日の事件の結果な。犯人のランク低ぇ癖にお前等が手こずったからソコソコあるぞ。全員次の出動要請までにこなせ」


こうして発表される今回の『ペナルティ』。
スカイハイ:384。折紙サイクロン:58。ロックバイソン:413。ブルーローズ:98。ドラゴンキッド:421。ファイヤーエンブレム:50。

「えぇ!?ボク今回そんなに高いの?!」
「捕獲に集中し過ぎて周り見てねぇからな。アントニオは落ち場所が悪かった。あとイワン、お前は見きれに集中し過ぎて巻き込まれ事故多すぎ」
「うぅ…申し訳無いです…」
「今回は50切れなかったから日本文化の話はお預け。まぁ今回ネイサンは参戦してなかったからいつも通り50な」
「悔しい事に間に合わなかったのよぉ…ま、この位ちゃっちゃと終わらせるわ」

今回一番ポイントを獲得したのはドラゴンキッドなのに一番ペナルティが高い。
そしてそれほど活躍していないのにロックバイソンさんもほとんど同じだ。
二番手でポイントを取ってるスカイハイさんもほぼ400。
真琴さんのペナルティは、普段のメニューに加えてこの数字の分だけ腹筋・背筋・足上げ・ランニングをこなさなければならない。
勿論強制力は無い。嫌ならやらなければいい。それでも各自、数字を誤魔化したりサボったりした所を見た事がない。

「んでぇ、虎徹とバーナビーは能力が能力だからしゃーねーけど相変わらず高かったぜ。ワイルドタイガー:511」
「うぇえ!?な、なぁ真琴ちゃあん?いい加減俺の歳考えてくれよぉ…」

猫なで声で真琴さんに擦り寄るオジサン。あ、思いっきり顔面に肘鉄食らった。
サボリ魔のオジサンでさえ、これだけはちゃんとこなす。

「『ちゃん』とか付けんなお水のネーチャンかオレは。壊し屋のお前がもうちょいで500切れそうだから頑張った方だろ。んでバーナビー…」
「はい」
「お前は二万」
「えっ?」


   僕が…五桁?二万?なんだ、どういう冗談だ?
   オジサンよりもペナルティが高い?
   そうじゃない。数字だ。五桁なんて初めて聞いた。
   今までのペナルティだって多くても三桁以内しか聞いたこと無いのに…
   僕が何をしたんだ?


「反省としてペナルティこなすまで出動許可は出ねぇ。アニエスにも言ってある。終わるまでに他の奴らにガンガンポイント取られてろ。虎徹も手助け無しだ」
「ちょっ、おかしくないですか?!何で僕がそんなっ!」
「あ?」

ギンっ!と睨まれた瞳は怒りが宿っていて。
『やっぱり噂通り本当に強いのか』と、怖くて言葉が出ない。
強いと言っても何が強いのかさえ分からないのに、それでも怖くなる。

「『何で』じゃねぇよ。『何をしたか』を自分で考えろ。前から思ってたけどお前、外見良くてヒーローだったら何でも許されるとでも思ってんのか?」
「そんなっ、事は…」

だけど僕は何もミスはしていないはずだ。
順調にポイントを稼いでいたはず。
心臓が痛い…何だ…何をしたんだ僕は…。

「そんだけのペナルティ食らうような事をお前はしたんだよ。ポイント稼ぎに執着すんのは勝手だけど、もっと周り見ながらやれ」
「……、前から聞きたかったんですが、ヒーローでも無いアナタに何の権限があって」
「おいバニー止めろ!!」
「止めんな虎徹。つかお前、この近距離で怒鳴んなよ頭痛ぇんだから…一瞬トンだわ…」
「あ、悪ぃ…けどお前がっ」

酷い二日酔いみたいな真っ青な顔色と痛みを堪える表情。
だけど瞳だけは、今にも噛み殺されそうな…

「元々バーナビーがオレを気に食わねーのは知ってる。チヤホヤされて感覚麻痺ってんだろ。一般市民ナメんなよ?」
「別にナメてません。アナタはどういう権限を持って僕達ヒーローにあれこれ言っているのかを聞いているんです」
「んじゃお前はヒーローじゃねぇスポンサーから援助金は貰って、ヒーローじゃねぇアニエスから指示は聞くけど、ヒーローじゃねぇ市民の『苦情だけは許さねぇ』のか。中々サイテーだな」
「アナタからのペナルティは毎回意味が分からないから意見しているんです。何を元に数字を出しているのかいい加減教えて貰えませんか?」
「うわもー、これだけ言って凹まねぇタフな精神逆に凄ぇ…。…カリーナ、先に着替えて下で待ってろ」
「えっ。あの、でも…」
「いーからいーから。オレのテンション上がるようにしっかり可愛く化粧して待ってろよ?ほら、他もトレーニングに戻れー」

真琴さんが皆に少しだけ笑う。勿論無理をしてる。
だけどその表情は『此処から立ち去れ』の意味。心配の視線を向けながら皆が離れていく。
勿論心配しているのは、僕じゃなくて真琴さんにだ。


「前から思っていましたがアナタは一体何様なんですか?【ナンバーゼロ】とか言ってそれに胡坐をかいて結局何もしてない癖に一人前に人には説教ですか?!」
「まぁ落ち着けガキ。血圧上がるぞ」
「いっづ!!!?」
「寝不足だって顔見りゃ分かんだろうが。その相手に怒鳴るって常識ねぇのか…」

いきなりすねを蹴られた。避けられないスピードで。
何なんだ!!鉄板靴で蹴るなんてソッチこそ常識が無いだろ?!

「つか何様でもヒーロー様でも社長様でもねぇよ。お前等が守るべき一般人様。んで、自己の否を認められないお前って何なの?」
「納得する否であれば認めて反省もします!!アナタは何も知らせずに突然ペナルティを乗せてくるだけじゃないですか!!」
「あーもー、面倒臭ぇなぁ。なんで自分の反省点を自分で見つけようとしねぇの?いい大人が喚くなよ…」
「子供扱いしないで貰えますか!?僕は司法局から認可されたっ」


  「『ヒーローですね』。だからどうした?」
  「っ…」
  「その肩書で敵がひれ伏すならいくらでも言え。そしたら司法局員の受付嬢だってNEXTなら『お前と同レベのヒーロー』だ」
  「…………」
  「市民目線でお前のそんな肩書きは『どーでもいい』んだよ。司法局から認可されてるから何か特別ですげー強くて街を守ってくれんのか?って話」


本当に腹が立つ。
自分が冷静になれない…。
それは一々真琴さんの嫌味に…言い返せないから…。
穴がない。間違っていないから。


「ついでにオレも司法局その他からも色々認可貰って『今の仕事』してますけど。お前より偉い?ちげーだろ。認可貰わなきゃ出来ねーから自力で取っただけだ」
「ハイハイストップ!…真琴、ほらお水と冷えタオル。少しはクールダウンしなさいよ。機嫌悪いのと比例して頭ガンガンでしょ?」

見かねたのか、手を叩きながらネイサンが僕達の間に入った。

「おー流石はネイサン気が利くぅ……何これペリエじゃん。ネイサンの?ブルジョワ怖ぇ…今度何か奢れよマジで」
「アンタが『それなりの格好』するならいつでも連れてって上げるって何回言えば気が済むのよ?」
「オレが【正装する場所】は一箇所だけ。ソレ以外で着る気は無ぇんだわ」

そしてペリエをネイサンに戻す。
…瓶だけどそのくらいも自力で開けられないのか。

「アラそうですか。あとハンサムも、いい加減本当に大人気ないわよ」
「え、何?コイツ『ハンサム』ってあだ名付いたの?…【ウチの子、ペリエしか飲みませんの】。このネタってもう若い衆には通じねぇ?」
「ちょっと真琴ホントに頭大丈夫?今にも倒れそうな顔してるのにカリーナと行けるの?」
「あ……。おいヤベーぞ、カリーナの事忘れてた。そうだよワッフルが待ってんだよ。お前に構ってる暇無ぇしオレ行くわ。貶してたら超タバコ吸いてーし」
「やめてよアタシも吸いたくなるから。あとカリーナの前で吸うんじゃないわよ?」
「気ぃつける。そんじゃあみんな、オレは今からJKとワッフルの旅だ羨ましいだろ特に男性諸君。土産はカリーナにメールな?奢っちゃるからペナルティこなせよ」

そう言ってみんなが返事をして真琴さんは立ち上がる。
よろけてる。とてもじゃないけど顔色は良く無い。

「そう思うとカリーナって天然保冷剤だよね。夏場に便利」
「ワッフルは凍らせて食うもんじゃねぇけどな。んじゃ」

それだけ言って、真琴さんはフラッフラになりながら部屋から出ていった。
他のみんなは今までの僕達のやり取りなんて無かったように、チラシに群がって何が食べたいか土産選びに夢中で。


「バーナビーくんも一緒に選ばないかい?」
「……。僕は皆さんよりペナルティが多いので遠慮します」


   つまり、真琴さん肯定派。
   悪いのは僕。理不尽な数字でもない。
   何をしたって言うんだ…。



「あ、行っちゃった…。二万ですもんねぇ…。しかも終わるまで出動禁止…」
「ポイントゲッターには出動禁止はキツイだろうし、意地でも直ぐに終わらせるだろうけどな。…でも、真琴にしては新米だし相当我慢したと思うぞ。『二万』で許したんだ」
「それにしても案外ハンサムも子供よねぇ。まだ調べてもいないなんて…。『自分から動かない』って真琴のいっちばん嫌いなタイプよ?タイガー、これから大丈夫なの?」
「分かんねぇ。バニーが動かなきゃこの関係もずっとこのまんまって事だろ。理不尽だと思われる真琴が可哀想だぜ」
「でも緘口令出てますし…『五桁超える』ってどういう意味か知ったら、バーナビーさん…」
「まぁ…ある意味知らねぇ方が幸せかもな。俺達全員の反省でもある」


五桁を超えるペナルティ。
それはヒーローとして全員に深い傷を作る。氷のように鋭く冷たく切り裂き、炎のように熱い傷口。
治ることのない凍傷とケロイドが一気に全身に襲い掛かる、涙が出るほどの猛烈な痛みに悶え苦しむ。
だがそれに耐えなければならない。涙を流す事も泣き叫ぶ事も後ろを振り返る事も、真琴は絶対に許さない。
ペナルティは【罰】なのだ。そしてそれを与えるのも【ナンバーゼロ】である真琴の仕事。
二度目が絶対に起きる事が無いように、徹底的にヒーロー達に一生消えない心の傷を残していく。
これに耐えることが、【ナンバーゼロ】の前で『ヒーロー』を名乗る覚悟。

「ね、ねぇ!それよりワッフル決めようよ!ボク達は口止めされてるんだしハンサムに構ってても仕方無いよ!!ペナルティだってこなさなきゃ次回上乗せだよ?!」
「そうね。引き摺って次もミスしたらそれこそ真琴の逆鱗に触れるわ。気持ち入れ替えるわよ!!」

二度と後悔をしないように。








◆◇◆








「ん~!!ヤベェマジで美味しいーv」

人気店で少し外で待ったが、店内に入り頼めば味は噂通り。
真琴が嬉しそうにカットして食べている。

「オレここのリピーター確定だわ!」
「はい真琴さんそのままっ!!」

いつの間にか構えていたカリーナにバッチリ写メられた。

「あっ!お前何写メってんだよ?!フケ専だと思われるから友だちに見せんなよ?!」

吃驚した真琴だが、嬉しそうなカリーナを怒る事は無い。
元から女性には相当甘い。
それに彼女も『五桁の数字』を聞いていたのだ。今くらい、忘れさせてあげたい。

「あ、全然大丈夫です。真琴さんって私の周りだと高校生って思われてますから」
「ソコまで若く見られてんのかよ…。つか待て。さり気に自白してっけどお前学校で見せてんだな?」
「自慢ですからv」
「何のだ。こえーな今時のJK。プライバシー無視か。つかオレが高校生とか、車運転してたら捕まるじゃん」
「だってタイガーだって20代後半に見られる事ありますよ?」
「はぁ~?アイツ三年後には四十路だぞ!?つかまだ日系が強めなだけで一応混ざってるぜ!?…えーなに、オレの眼ぇおかしくなってんの?」

お兄さんショックだわ~…と言いながらモグモグ食べつつむ~っ、と苦い顔をしている真琴。
真琴は良く喋るし会話は楽しい。本当に表情パターンが多い青年で、カリーナが嬉しくなる。
黙っていればエスニックで誰もが綺麗だなんだと言う顔立ちだ。腰履きツナギで十分サマになるくらいなのだから。
だが真琴が黙るのは何かを食べている時か余程の訳ありの時で、殆ど独り言も含めて喋っている。考え事が全部口から出るタイプなのだ。

   【イケメンは欠点が有るからこそ魅力的なのよ?完璧なのは【人形】って言うの。キースちゃんがいい例じゃない】

前にネイサンがそう言っていたなぁと、カリーナがそんな事を思いながら。
今だけでも彼が『本来の仕事』を忘れてくれるなら。

「真琴さんは純粋日本人だから他より一層って事ですよ。童顔入ってるし」
「サクッと見えないナイフを思いっきり心臓一直線で突き刺してくるなお前…。オレさぁ、日本に居た頃『童顔』だなんて一回も言われたことねぇよ?」
「うっそぉ?!ソッチの方が絶対おかしいですよ!日本人の眼がおかしいですって!」
「フォークをコッチに向けるほど吃驚する事かよ危ねぇなぁ…」

向けるほど吃驚したが、確かに危ないのでカリーナもちょっと落ち着つく。

「だって何か…ソッチのが無いですって。おかしいですよ日本人の骨格!」
「お前こんなトコで日本人の…しかも『骨格』を敵に回されてもこっちの対処しようがねぇだろうが日本人が困るわ…。取り敢えずオリエンタルタウンの住人から苦情来るぞ」
「でもぉ…。じゃあ真琴さんの背って日系だと普通なんですか?」
「大体平均じゃね?顔も。虎徹くらい背が高いのも意外と珍しいんだぞ?」
「そうなんだぁ…大人になればタイガーくらいが普通だと思ってました」
「スイマセン、オレは現在既に大人なんですけど…」
「だって頑張って大学生くらいにしか見えないですもん」
「どんだけ昔だよ。まぁ日系はみんな童顔扱いされるし、人種同士がお互い顔の区別付かないのは昔からだろ?オレ、コッチ来たての頃、ナンパした時に尽く全員年下で相当構えたからな」
「……。真琴さんっていつでも女の子の事考えてますよね…」
「その恐ろしい程の軽蔑の視線を止めんか。ナンパする暇が無かったのは大学ん時くらいだし。あの頃程勤勉で真面目だった時期は無い」

キリっ!とした顔をする真琴だが。

「じゃあ今は?」
「反動で悪化した自覚はあるが、行動する隙がない」
「ですよねー…」
「つーかオレが忙しいってお前等ヒーローが一番分かってんだろ?モテる相手はオカマに子供に…泣きたくなるわ」

ジーザス!と天を仰ぐ真琴だが、カリーナは知っている。
この外見でモテないというのが全く嘘だということを。憎らしい。
それでもヒーロー達を優先してくれているから、余計になんだか憎たらしい。

「女の子にモテまくってる癖にっ……私だって、いるのにっ…」
「オレはお前のスーツが【実はパッド】だと知った時点で男性代表として思いっきりショックを受けたぞんだぞどうしてくれんだよ…」
「え!?今私っ!」
「結構大きめで声に出てたぞ?てかお前コレ残すなら貰うわ」
「あっ!?それ最後に取っといたのにヒッどい!!」

真琴がカリーナの残りのワッフルを奪ってまた騒いで。
カリーナはずっと体調や顔色を心配していたが、真琴に直ぐに気付かれて『せっかく誘ったんだからンな顔すんな』と笑って撫でられ。
どうやら一山超えたのかランナーズ・ハイに入ったようで、取り敢えず倒れる心配は消えたと真琴が言うのでカリーナもせっかくだからと気遣いを止め。
こうして明らかに『カップル』ではなく『友達同士』だが、店員から苦情が来ることもなく喧しいほど盛り上がり。
お互いが食べ終わり珈琲とカフェオレで一息だ。



「はぁ、店出たら直で仕事戻るから。送れなくて悪いけど気ぃつけて戻れよ?」
「了解です。……あの、さっきの、ハンサムの事っ…」
「なに?もしかして好きだったら悪ぃ。押さえ気味にソコソコボロッカスに言った気がする」
「そんな訳無いです!!あそこまで言われて、何で本当のコト言わなかったんですか!?あんな自己中、絶対自分じゃ気付きませんよ!腹が立つ!!」
「めんどいもん。オレ甘ったれ嫌いだし放っとく。分かんなかったら周りが教えてあげるって環境でも歳でもねぇだろ。そういうのは十代まで」

ナプキンで口を拭い真琴が立ち上がる。

「さて行くか。あの遠慮知らず達の土産は何だって?カリーナが持てる分しか買わねぇからなオレ」
「はーい。確認するんでちょっと待ってくださいねー」

カリーナがかばんからケータイを出しメールフォルダを開けば。

「あ、メール来てる来てる……メニューだけでも凄い長文…」
「まぁメニューの名前が長いから長文にもなるだろ。つかさー、こういう店って店員さんも美人だよねー。何とか番号交換出来ねぇかーっだぃ!?」
「ほらこれがみんなからのメニューです!!しっかり見て下さい!!!」
「かばんで殴るか?!」
「『凍らせたかばん』か『私の本気のグー』よりマシだと思いません…?」

既に眼が笑っていない上にクーラー状態のカリーナに、真琴も両手を上げて観念する。
今の体調の悪さではどう考えても食らったら仕事どころの話ではない。さっさとケータイを受け取り注文する。
勿論店員の女性にケー番を書いたメモをさりげなく渡してある。店員が脈アリなのは気付いている。
カリーナに気付かれることもない、当たれば儲け物程度のいつもの行動だ。

「つーかこの量何事だ…奴らオレの財布が底無しだとでも思ってんのか?」
「思ってますよみんな。ったく、相変わらず女癖悪いっ…」
「なにー?嫉妬してんの?」
「してませんー!!さっさと買ったらどうです!?」
「まーまー怒んなって。店内はカップルデーだから今はオレ、『お前のモン』なんだし」

真琴が優しい笑顔でポンポンとカリーナを撫でる。
大人に撫でられるのは嫌いだ。子供だと思い知らされるから。
特に真琴は表情作りが上手い。今だって絶対に言い返せないような表情で自分を見てくる。
本当に自分の『彼氏』のような…

「ずるい…サイテー…」
「フッ、JK楽勝だな。ほれ外で待つぞー」
「そういう一言が一々多いんですよ!」








◆◇◆








時間がかかる上に他の客に迷惑なので、いつもの悪戯顔の真琴に手を引かれて店外へ。
手なんか引かなくても、ちゃんと付いていくのに…

「うわ、何か暑っ…。おい、お前顔真っ赤だけど大丈夫か?ほれほれ『ちょっぴりコールド』だろ?」
「だったら真琴さんを『完全ホールド』ですよ?」
「オーケー、来るか?」

停めてあるバイクに腰掛け笑いながらパッと手を広げる真琴。
だがカリーナの足はグッと止まる。勿論飛び込める勇気が有る筈がない。
それを分かっている真琴が苦笑する。

「……。ほーれー、ツンデレ娘。たまにはデレて素直に来いっつの。真琴さん両手が超寂しー」
「そう言ってこないだ胸揉んできたの誰ですか…」
「アレは発育の手助けをだな」
「あーもー、いいです!真琴さんの頭ってエッチな事しか無いんですか!?」
「当然だろうが。可愛い子いたら抱き付きたいのは男として正常反応だ。白馬の王子だってエロい事八割で出来てんだぞ?」

真面目な顔をして気持ちがいいほどハッキリ言い切る真琴。
寝不足と疲労で具合が悪いのは真琴なのに、逆にカリーナに頭痛が襲ってくる。ズバっと言われるといっそ清々しい。
結局後ろ抱きの形でカリーナが真琴の腕に収まった。機嫌良さそうに真琴はカリーナの髪を撫でる。

「なんか髪傷んでね?女子は伸ばすの大変だよなぁ」
「最近要請多くて忙しいんです。眠くて手入れする暇も無いですよ」

そこまで言ってハッ!とカリーナが口を止める。
自分がそこまで忙しいのだから、真琴は【ナンバーゼロ】としてその何倍も忙しいのだ。
そんな相手に愚痴るなんて…。

「…すいません…」
「え、いきなり何が?!会話の脈絡おかしくね?」
「そのっ…愚痴ったりして。真琴さん、倒れそうなのに…」
「あぁ…。出来ればそっちよりさっき殴った方を謝れよ。つかちゃーんと髪とお肌の手入れはしろよ?アイドルポジなんだし」
「…怒らないんですか…?」
「そりゃオレも忙しいよ?でもお前は女子高生でバーで歌手もやってて、その上身分全部隠してヒーローやってんじゃん。友達とも一番遊びたい時なのに全部隠してさぁ。頑張ってんじゃん」
「私よりも真琴さんの方が大変ですっ!」
「そーでもねーって。それにお前には家族もいる。オレさぁ、もしお前の両親の立場だったら絶対ヒーローなんてさせねぇよ。猛烈大反対するわ」
「何でですか?私の能力は大きいですし街を守れますし…」
「でもタイタンのヒーローになったのは『夢』の為だろ?それに【ブルーローズ】のキャラはお前じゃねぇし」

ぐっ、とカリーナが詰まる。
その通りだからだ。ヒーローの契約の際の事は、本当に守られるのか。

「友達とも遊べねぇし、要請の度に怪我の心配しなきゃなんねーし、そんな苦労を一切隠して学校に行かなきゃとか身体持たねぇだろ。オレは一人な分、お前よりずっと楽」
「……っ、若いから真琴さんより体力有るんです!」
「オレだって体力有るわ!つかぜってーお前よりある!男の意地にかけてある!!」

本当に何にも気にしない声で真琴は変わらずカリーナの髪を弄っている。
そして心配してくれているのも本当だ。そうやって【本当の自分】を心配してくれる人がどれだけ有難く大切な存在か。
誰にでもスキンシップをやっているのは分かっている。期待してはいけない。
だから顔を見られないように、絶対に正面からは抱き着かない。

「まぁ、オレとしての希望を言うけど。オレは【ブルーローズ】っつーヒーロー界のアイドルじゃなくて、【カリーナ・ライル】っつー一流シンガーになって欲しい訳よ」
「今はそこに向かうまでの通過点です。今出来る事を全部全力でやるんですよ」
「つえーなお前。メンタルバリ強。でも自立心のしっかりした女性は魅力的だ」
「今時の女子高生はこのくらいの精神力は当たり前ですよ?」
「さーすがっ。惚れるわ」

クスクス笑いながら真琴がぽふっとカリーナの肩口に顔を埋める。
勿論こんな行動も惚れるだなんて言葉も冗談だ。
自分達は恋人でも何でもない。
ただ、誰にでも『冗談』に聞こえているだなんて思わないで欲しい。
心臓が、痛い。

「…普通は『抱き着く』とか、思うだけで実行しないもんじゃないですか?」
「据え膳は遠慮無く食べる派です。つかヒーロー男子組の純粋培養具合にお前は何か不自然さを感じねぇの?もう彼処までいくとなんか作為的なものを感じるぞオレ。ヒーローアカデミーって禁欲生活?」
「私が知るわけ無いですよね?確か折紙とハンサムが出身だしに聞いてみたらどうです?」
「嫌だ。事実本当に『禁欲生活』って言われてみろよ。想像するだに恐ろしいわ…オレ絶対無理…」
「……。真琴さん、女の子の前で当たり前のように下ネタ言うのどうかと思いますけど…」
「だってーオレ女の子好きだもんー」
「そのウチ『エロオヤジ』とか言われますよぉ?」
「お前さっきはオレのこと『高校生呼ばわり』しといて今度は『オヤジ』ってどういう事だ」


ちゃんと苦しくないように力加減をして腕を回してくれている。セクハラなど微塵も無い。両手も自身で組んでいる。
後ろから聞こえてくる言葉もさっきまでと変わらず明るく、茶化すような言い回し。
全部が冗談。嘘。建前。数秒後には忘れてしまう、真琴にとってはどうでもいい事。
喋っていないと、何かしていないと、真琴は『自分を保てない』。

ただ一つの真実は。
悲しいほど真琴の手は冷たく、凍えたように震えている事。
だったら思い切り抱き付いてくれればいいのに。遠慮なんかしないで欲しい。
…だけど、そんな事を自分から言えない。

何だか泣きたくなってしまう。







「…さて、ありがとなカリーナ。付きあわせて」

ワッフルも出来上がり、真琴がポンッとカリーナの背を軽く押す。
同時にカリーナは急いで表情を作り、真琴から離れて振り向く。

「いえ、私も行きたかったですから!!ご馳走様でした!」
「他の奴らからもその言葉が聞きてぇ…。んじゃオレ行くな?仕事残ってるから」
「……あの、真琴さん」
「んー?」
「今回のハンサムのペナルティ『二万』って…そのっ…」

口ごもるカリーナに真琴は表情も変えずに応える。

「ホントは数字で表しちゃいけねぇとオレも思うよ…。けど今回は現場とブイ見て、ポジション的に助けられたのはアイツだけだった」
「そう、ですか…」
「強いNEXT同士が『街中を暴れて何もかもが無事』だなんて所詮空想。【終わり】を見れないなら、いつまでもサイテーヒーローだろ」

暴れればモノは壊れる。自然の道理。
それが街の中で巨大な建造物や逃走者などの敵を相手に巨大な力で戦うのだから、ビルや家が壊れないはずがない。
いくら警察や消防隊員がフォローしようと、死傷者が出ない筈がない。

「アイツはポイントゲッターだろ?敵も味方も街も全てがポイントにしか見えてねぇ。虎徹が徹底教育しねーと何時迄も気付かねぇだろうよ」
「でも、喋っちゃいけないんですよね…」
「駄目だ。自分で気付かなきゃ意味ねぇ。それで辞めるも良しだろ。マーベリックが随分押してるけどオレは知らん」

グーッ!と真琴が体を伸ばす。

「オレは『ナンバーゼロ』としてヒーロー達の代わりに犠牲者とこの街の『修復』をするだけだ」


事件の後始末。
全てを無に帰す零。全ての終わりであり、始まりである零。
その数字を与えられた瑞波真琴。
意味は沢山ある。あらゆる意味を総合して、彼は【零】なのだ。


「カリーナ、お前いい子だしアイツにすげー怒鳴りてぇだろうけど、我慢しろよ?」

煙草に火をつけ真琴が必死に怒りを抑えているカリーナを撫でる。
真琴だって我慢させているのは、分かっている。

「分かってます…。でも、思いっきり蹴っていいですか?」

カリーナの返事に真琴が笑う。

「一応何かしら理由は付けろよ?女性から意味なくいきなりブチ蹴られたら相当ショックだからな。オレお前にされたらビビって引き篭もるわ」
「アイツがそのくらい繊細な神経を持ってればいいんですけどね!!」
「蹴るの決定かよ。女子高生から蹴られるとか、どんだけ可哀想だよアイツ」
「笑ってますけどホントに普段からもいい気になってあったま来てるんですから!!」
「はいはい分かったって。当たったらどんな反応したか報告な?」
「絶対当てますから!一番で報告するんで!!」
「メール待ってる。あ、あとな?」
「はい?」

ポンポンと真琴がカリーナを撫でる。

「お前もだけど、皆にも【いつも通りなーんも気にせず戦え】って言っとけ。他も絶対気にしてるからな。壊したってオレが直す。【壊すだけ壊して取り逃がしたら覚悟しとけ】ってな」
「分かりました!」
「あとワッフルも残した奴も怒る。そんじゃ真琴さんは『お直し』に闇夜に消えますよっと。ニンニン♪」

煙草を携帯灰皿に消して、一気にバイクのキックを入れて真琴は直ぐに見えなくなった。
最後まで巫山戯て、笑いながら。
誰にも心配をかけないように。


「……何で笑っていられるんですか…」

一番傷ついているのに。今度は素直に涙が零れた。
凍った掌を、一体誰が温められるのだろう。
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プロフィール

寅丸

Author:寅丸
アニメが終わってからデュラの存在を知った可哀想な感じの人。原作しか知りません…orz。きっと静雄と派生が好きだと思う。ケロロは電波黄色と喧しい。10年目でいきなりハマった。なので【今更】。ピクシブ  呟き

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