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イマサラ

腐向け/R15/DRRR!!・K66・TIGER&BUNNY中心/いろんな妄想ダダ漏れな欲望全開。

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●演奏会後にて。 (粟楠会)

仕事が終わったと、思ったら…


今回の演奏会も無事に終わった。
世界的有名指揮者のワールドツアーで日本公演二日間は、両日共に観客からスタンディングオベーションだ。
舞台から降りて、さてこれから【反省会】と言う名の激しい追撃攻撃大会か素直に【打ち上げ】か。
反省会でなければさっさとと帰りたいなー、なーんて考えていたら。

「尊寅、お客さん来てるから早急に表行ってくれる?」

若干顔が引きつりながら、コンマスが声を掛けてきた。
その手には尊寅愛用の杖があり、「さぁ持て」とばかりにソレを渡された。つまり『絶対に行け』と言う命令だ。
まだ楽器も片付けていなければ着替えてもいない。
そして何より、コンサートのメインである指揮者じゃなくて何故自分?
そうなれば答えは簡単。自分の知人。
誰が来たかは知らないが、こんな疲れた時に喧しいヤツの相手は絶対にしたくない。

「嫌だ」
「『嫌だ』で済む相手じゃ無いからさっさとゴー。追っ払うまで戻って来るなよ?」
「…楽器持ったまま?」
「お前のは仕舞うの時間かかるし触らせないし。だったら持ったまま」

誰が見ても『面倒臭い』と顔に書いてある。
だがこのコンマスとて尊寅との付き合い方や扱いは分かっている。

「随分可愛らしい姫とそれを守る恐持てから名指し。早く終わらせて【メンタル崩壊!激突反省会】やるよ。加わって欲しいから早くね?」

そう言うとポンポンと尊寅の肩を叩いて彼は控え室に戻ってしまった。
そして残っていたメンバー達も出来るだけ奥に引っ込ませる。
大体今ので誰が来たか分かったし、【激突反省会】と言うことは自分が入らないと確実に味方が潰される。
味方というか、いつの間にか『金管楽器部隊長』に勝手に任命されているので出なければいけないのだ。
今日は何を言われるやらと、尊寅の楽器は重い部類なので、汚れないように靴の上に降ろして嫌だなーと思いながら待っていたら。

「尊寅お兄ちゃん今晩は!!」
「おー、やっぱり茜か…」

パタパタと軽い足取りで『可愛らしい姫』事、粟楠茜が来た。
そして後ろからは『恐持て』の父・幹彌と四木に赤林だ。
これは確かに追い払うべきだな…、と尊寅が思いながら。


   カッ!!


「きゃっ!?」

このまま抱き着きそうな勢いの茜に、見せつけるように思い切り杖を鳴らす。
驚いて茜の足は止まり、後ろの三人は威嚇して来たがそんなもの尊寅には効かない。見てもいない。

「茜、『オレに近付く時は』…何だった?」
「……。あっ!『走って抱き着かない!』。お兄ちゃんが転ぶから」
「だろ?来るならゆっくり歩いて来い。オレは転びたくない」
「はーい」

実際尊寅は茜には何度も転ばされている。
勿論避ける事も杖で止める事も出来るが流石に相手は子供。しかも女の子だ。
子供にそこまで無下な態度は取らない。力加減が良く分からないので手は上げないようにしている。
コレでも女子供にはソコソコ丸い性格なのだ。


「お兄ちゃんお疲れ様ぁ」
「んー、疲れたぞ…。随分着飾って来たな?」

ゆっくりポフッと腰に抱き付いて来た茜をよしよしと撫でる。
残念だが現状は抱き上げる事が出来ない。今は片手に杖で片手に中型楽器を持っているのだ。
そもそも『子供を抱っこ』なんてしないだけで出来なくも無いが、どう考えてもバランスを崩してどちらも怪我をする。

「可愛い?似合う?」

今日の茜はフワフワのファンシーなロリータドレスファッションだ。
やり過ぎ感も若干あるが、今日ほどの規模の演奏会ならドレスコードなど当然だ。
ニッコリと笑いふわりと回って見せる茜。

「そんだけ良いドレスやアクセを着ければ誰でも可愛いくなる。お前、化粧濃くないか?」

『力の暴力』が無いだけで尊寅の『言葉の暴力』が消えることはない。相変わらずオブラートが無い。
子供相手でも尊寅は思った事をストレートだ。通常運転だから仕方無い。
茜も多少は尊寅の性格は分かってはいるが…

「お兄ちゃん…あたし、泣いちゃうよ…?」
「喧しいから外でな。いっそ帰れ」
「本気で酷い…」
「オレにリップサービスなんか求めんな。まぁ、いつかオレに『良い女だ』って言われる女を目指せ」

その言葉に不思議そうに茜が視線を上げて尊寅を見る。

「…お兄ちゃん、誰かに言ったことあるの?」
「多分無いと思う」

もー!!とポカポカ叩きながら怒る茜をハイハイと流して。
ひと通り茜との会話は終わったようなので、今まで口を開かなかった大人たちが声を掛ける。



「全く相変わらず辛口だぁねぇ尊寅さんは。お嬢も尊寅さんに誉めて欲しいからの乙女心だよ?」
「悪いが生まれついての素直な人間でな。お前らが勝手に褒めて持ち上げとけ。オレの仕事じゃない」
「可愛い娘を着飾りたいのは親として当然だろうが」
「そんな心境知った事か。つか何しに来た幹部連れて」

茜には見えないように幹彌達三人には面倒臭い顔を向ける。
事実、緊張感がピンと張った状態が二時間続いて疲れている。
正直疲労と四人の相手とこの後の激突反省会があるので、尊寅は嫌で嫌で仕方が無い。

「お前らが来たせいで警戒体制にオレが使われてんだぞ?まだオレは片付け終わって無いし。どうやって入った?」
「チケット買って堂々とに決まってんだろうが。ドレスコードも決めてる。『粟楠会だから入れない』なんて事は無ぇだろ?」
「いや、顔。面構え的に警備員に止められる」

尊寅の顔には『さっさと帰れ』としっかり顔に書いてある。
ここまで嫌そうな顔をよくぞ粟楠の、しかも幹部相手に堂々とするものだと幹彌は思う。
茜がいるから暴力沙汰には成りはしないだろうが、いなかったら自分達はこの隻眼のダルそうな美青年相手に今頃どうなっていたか…。
【藤堂】の苗字を持つこの男の事は、ソレこそ子供の頃から知っている。

「あのなぁ、コイツ等より下のが余程顔的には無理だぞ?」
「顔に傷の時点で赤林も四木もアウトだ。どうせ警備員脅しただろ。オレなら絶対入れん」
「してねぇよ。茜が会いたがってたんだ。四木は単純に来たかったらしいから連れてきた」
「ふーん。で、お前は親だから分かるが赤林は?」
「四木の旦那が行くならおいちゃんもねぇ~、と」
「即帰れウザい」

茜が引っ付いていなかったら今頃赤林に尊寅の杖が襲いかかっている。
『右目が無く杖常備』と、中々居ない外見のお揃いだが二人は全く違う。外見も性格も力も何もかも。
赤林は粟楠会でも手足れだが、サシで尊寅に勝てるとは一度も思った事は無い。それだけ尊寅は『心・技・体。全てにおいて強い』と言える。
久しぶりにきちんと対面したが、印象が全く変わらない不思議な青年だ。

「って言うのは勿論冗談で、護衛で来たんだからそうも邪険にしなどくれよ。風本クンじゃチャラくて浮くし青崎の旦那も怖い意味で浮くだろ?」
「お前らでも十分怖がられてるって言ってんだろうがオレがここにいる時点で。傷を隠すくらいのマナーは無いのか。…茜」
「なぁに?」
「お前の目、厳つい男ばっかり見て麻痺してるな」

それは粟楠会の嫡孫として良いのか悪いのか。
取り敢えず自分の仕事場には引き連れて来るなと思っていたら。

「尊寅さん、是非指揮の方にサインを頂きたいんですが」
「ん、何で?」
「だから、四木さんは『自発的に来たかった』ってさっき言ったでしょう?」

相変わらず全く人の話を聞いていない尊寅に、赤林が助け舟を出す。

「あぁ…。多分まだ挨拶回りしてるだろうしいると思うが…日本語通じんぞ?通訳するなら金は取る」
「お願いします」
「……。お前ホントに楽しみで来たんだな。こっちだ」








こうしてコンマスからは『帰せ』と言われていたのに、結局指揮者用の別室まで連れていく事に。
指揮をする方だって疲れているのだ。早くしないとホテルに帰ってしまう。
途中で自分たちの控え室に楽器を置いて、漸く尊寅の片手が空いたがすかさず茜に握られてしまった。
茜を取られたとでも思ったのか、幹彌からの視線が痛いが別段気にしない。

「なぁ、茜は結局オレに何の用なんだ?せめて着替えさせろ恥ずかしい」

てくてく歩きながら茜に問う。

「尊廣お兄ちゃんに『尊寅を宜しくね』って頼まれたの!!」
「兄貴?」

確かに兄は現在仕事の関係で渡米中だ。
自分が日本に戻ったのとほぼ入れ違いのように行ってしまったが。

「…何を茜に宜しく頼まれたんだオレは?」
「お兄ちゃん、全然しっかりしてないもん!!だからあたしがしっかりさせるの!!」
「お前にしっかりさせられなくてもウチにはカイトいるから平気だ。嫁にでも来るつもりか?」

尊寅の言葉に一気に茜の顔がボンッ!と赤くなる。

「そっ、そんな事は言ってないよっ?!うん、お兄ちゃん話飛び過ぎだから!!」
「別にオレはまだ独り身を楽しむから来なくていい」
「でも遊びに行きたいよぉ。尊廣お兄ちゃんは呼んでくれたよ?琥珀ちゃん可愛かった!赤ちゃんプニプニ」
「オレは兄貴じゃないし琥珀も一緒に渡米中だ。来るな散らかる」
「まぁ茜だけじゃなく『粟楠会』としてもだ。お前との付き合いは兄貴以上に神経使う」
「オレじゃなくて『藤堂』と『麻一族』だろ?オレ個人には関係無い」

留学して戻ってもまだこんな関係が続いて行くのかと思うと、疲れた身体に余計に響く。
溜め息を付きながら指揮者控え室をノックすればギリギリでまだいた。
中々テンションと誇り高い白髪のジジィで、予定も無く突然来たのに何故か楽しそうだ。
そして尊寅が粟楠四人には分からない言葉で二言三言話す。

「…尊寅さん、向こうは何と?」
「多少は時間取ってくれるらしい。四木、相手はドイツ語だ」
「私は日本語以外は無理です」
「通訳は高くつくと思え」


   こうして両者の間で通訳しながら四木は握手とサインを手に入れた。
   しっかり他のCDも持ってきていてそれにもサインを貰っていた。
   指揮者の方もここまでしっかり自分のファンと分かり、嬉しくない筈がない。


「四木さん良かったね!流石尊寅お兄ちゃん!」
「はい。尊寅さんのおかげで良い思い出が出来ました」
「褒めても何も出なければ絞りとる事しかせんぞオレは」

上っ面ではなく本気で嬉しそうな四木の顔など、これはまたレアな表情を見たと赤林と幹彌が思う。

『TAKATORA!!』
「チッ、煩いコンダクターだ…」

妙な発音で名前を呼ばれて尊寅がまた何かを話している。
元々家庭の関係で中・日・英の三ヶ国語を話せるが、留学して一体どれだけ増えたのやら。
切りが付いたのか、尊寅が四人の方に振り向く。

「なんか…現段階でアッチはお前らをヤクザと知って相当興味があるそうだ」
「どんな事ですか?」
「良く分からん。いい加減オレは着替えたいし楽器も片付けたいから代わりの通訳連れてきてやる。ソッチの弟子も多少は日本語分かるからソイツに聞いてろ」









流石にもう疲れた。それに普段は私服の相手に礼服姿を見られているのが何だか嫌だ。恥ずかしい。
指揮者側に代わりを連れてくると言うだけ言って、了解も無く尊寅が茜だけ連れて部屋から出た。
勿論【誘拐すんな!】や【ロリコンはダメですよ】と言われたので後で思い切りブン殴る予定だ。
そして代理人を連れてくるべく控え室に向かう。

「お兄ちゃん?」
「茜、気になってたんだが」
「なぁに?」


   「スタンガン出せ」
   「―っ!?だ、ダメ!パパ達にも内緒だから!!」


茜は必死の表情だが尊寅が身を引く訳がない。
逃げようとする茜の腕を掴んで離さない。

「じゃあ黙っててやるからちょっと貸せ」

スタンガンがチラッと見えたときは見間違いか、激しい親バカパートⅡの護身用かと思ったが。
今の会話からすると違う。誰かから手に入れたものだ。
茜が観念したのか、おずおずと出したスタンガンを見れば中々結構危ない電力設定だ。
バチッ!!と鳴らせば、大きな音に茜が怯える。

「こんな人の多い会場に持って来んな。別に怒らんし取り上げもせんが教えろ。誰から貰った?」
「………」

黙り込むのは分かっている。
だが切り札はもう尊寅が持っている。

「パパが知ったら怒るだろうがオレは別に怒らない。教えないならバラして茜が怒られるだけだ」
「ヤダッ!だめっ!!」
「んじゃ素直にさっさと言え。って言うか、ここ音楽ホールだぞ?何持って来てんだ」
「………な、くら…さん」
「【なくら】?」


   こうして手に入れた経由から使用すべき相手までを一通り聞いて。
   どう考えても【奈倉】と言うのは臨也だろうと考えが辿り着き。


「静雄はスタンガンじゃ死なんし殺せんぞ?」
「えっ?」
「いや、返すだけだろ?ただし人混みだと勝手に弾ぜて関係無い人や、もしくは茜自身が感電死するから気を付けて使え」

尊寅がしゃがんでスタンガンを茜の目の前に出す。
別に茜がスタンガンを持っている事に気を掛けているんじゃない。勝手に持っていればいい。
ただ、大事な仕事場のホールに武器を持って来た事に気分が悪いのだ。
そんな事言い出したら四木と幹彌の拳銃や赤林の仕込み杖とて腹立たしいが、自分の前で使おうものならどんな目に合うかくらい分かっている筈だ。

「…怒ら、ない…の?」
「オレは最初から怒らんって言ったし奪うともチクるとも言ってない。茜が勝手に使えばいい」
「う、ん…」
「ただし他人を巻き込んだら責任は全部自分で持てよ。『粟楠会』の名前出して逃げる前提で持ってるなら二度とオレの前に来るな」


尊寅の言葉に複雑な気持ちになりながら、取り敢えずスタンガンを鞄に戻す。
こういう風に改めて危険な物を平気な顔で返されると怖くなる。
間違えたら自分が死ぬかもしれない…。誰かが死ぬかもしれない。
たまたま静雄だったから、無事で何も罪に問われないだけで…。





「さて、代わりっつってもあの三人とコンダクターに挟まれて生き残れそうなのは…」

控え室を開けて全員を振り向かせ説明をしている尊寅。
だが、ただの通訳だけならともかく【粟楠会】の若頭と幹部だ。いる訳が無い。

「ちょっと尊寅…」
「何だ。オレは早く楽器を仕舞いたいし着替えたい」
「じゃあ全部やってから再び行ってらっしゃい」

コンマスの一言に全員が『行ってこい』と手を振る。

「なんだお前…。オレばっかに押し付けんな。あのコンダクターすげー喋るから疲れる…」
「だって尊寅の客じゃん。むしろ他人が接待して何の意味があるの?ほらさっさと行って」
「……。いつかお前ら全員を恐怖に貶めてやる。茜、ちょっとその辺の気に入ったヤツに構って貰え。他人の着替えは覗くなよ?」
「そんな事しないもん!お兄ちゃんのバカ!!」
「これまた元気なお嬢さんだねぇ。もしやの藤堂クンの年離れた妹かね?」
「違う。いないしこんなのいらない」
「こ、んなっ?!」

そう言いながら漸く尊寅が自分の楽器を仕舞い始める。
そこそこ大きいので正直に全員が邪魔だった。

「尊寅お兄ちゃん!!あたしだっていい加減怒るよ!?」
「えっと、茜ちゃんだっけ?お姉ちゃん達と一緒に待ってようね。藤堂くんには何言っても無駄だから…」
「あたしだってレディなのに!尊寅お兄ちゃんのバカ!!」
「何回オレに『馬鹿』って言えば気が済むんだお前。レディは怒鳴らんぞ茜。馬鹿はお前だ辞書引いて意味を調べ直せ」
「もぉ~っ!!」



こうして散々怒る茜を完全無視して尊寅はテキパキ楽器を仕舞い。
着替えも終えて、再び別室に行くまでに茜が最近ジムで習った蹴りを放つも…


「動き辛いのに無茶すんな。折角のドレスが破れるぞ」
「………尊寅お兄ちゃん、酷い…」
「突然蹴り入れられるオレの方がどう考えても可哀想だと思わんか?」

当然避けられて、結局今は米俵のように肩に担がれている。
せめてお姫様抱っこと言いたいモノだ…

「レディは暴れず慎ましやかにしてろ。お前、ジムに行くわ静雄を殺したいわで将来粟楠を継ぐつもりか?」
「『慎ましやか』?」
「辞書引け」

そう言って再びコンコンとノックをして部屋に入る。

「ちょっ、流石に降ろしてお兄ちゃん!」
「降ろしたら暴れるだろうが。失礼します」
『「お嬢?!」』

無残な茜の状況に二人が同時に叫ぶ。

「茜が異常に暴れるがどういう事だ」
「おい茜を抱くにも形があんだろ尊寅!!」
「形はあるが適用するつもりは無い。ちなみに通訳は悪意を感じる満場一致で再びオレになった」

目の前のドタバタに指揮者が何事かと早口なドイツ語を繰り出してきた。
それに対して尊寅も茜を幹彌に返しながら滑らかなドイツ語で答える。

「何だって?!」
「『日本のマフィアは礼節正しいがそれに楯突くオレもマフィアなのか?』って。何処が…」
「いや~、半分以上マフィアって言っても差し支えないでしょうアンタの場合は…」
「オレは一般人だ。いきなり意味の分からん蹴りぶっ放す奴等に礼節なんかあるか」
「誰も尊寅さんに蹴りなんか…」
「このチビがさっき思い切りオレに立ち向かって来たがな。どう言う教育してんだ」
「茜っ!?尊寅相手にお前っ、怪我無いか!?」
「だってお兄ちゃん酷いんだもん!!!」


ギャーギャー騒ぐ粟楠親子を無視して指揮者からの質問は止まらない。
尊寅も分かる範囲で答えて、何のやり取りだったかを教えると言う作業の繰り返しだ。


「…なぁ、『着物を着ないのか?』と聞かれたんだが。『今日のドレスコードも何故着物じゃ無いのか?』って」
「なーんかあんまりヤクザが関係無くなって来てる気がするねぇ…」
「外国人は【日本に忍者がいる】と殆んどが本気で思ってるからな。で、どう答えればいいんだ?」
「音楽の話はしたくないのか聞いて貰えますか?」

四木の言葉を尊寅が通訳し、返事が返ってきた。
若干怒りながら。

「『今はそれより日本の話だ。音楽については過去に何百回と記者に話したからもういいだろう』と、怒ってる」
「畑互いが口出すなって事か…。気を害されたならすいませんとお願いします」
「謝罪ついでに着物について答えてやったらどうだ?気難しいんだ。質問攻めが嫌なら帰るか…ん?」

また何か気が変わったのか今度は気分良さそうに大声で何かを捲し立てている。
それに少しだけ尊寅が返して。

「親子喧嘩止めー」
「あぁ?」
「尊寅お兄ちゃんのせいだもん!!」
「うるせー。で、【ジャパニーズマフィアに会った記念】で全員で写真撮りたいって」

呆気に取られながら指揮者を見れば、既にカメラを弟子に渡している。

「なかなか若頭や幹部なんて珍しいしな。しかも日本の。後日焼き増しして送ってくれるらしいから名刺渡しとけ。んで早く並べ」

淡々とした尊寅の説明の間もずっと指揮者は『こっちへこい』とジェスチャーが激しい。
四木は勿論既に横にいる。

「誰をセンターに…」
「そりゃその指揮者だろ。若頭だからって別に関係無いし、来ても退かされるぞ……あぁ、茜は自分の前においでって」
「え!あたし!?」
「早くしないとまた気が変わって何言い出すか分からん。既に遅いと御立腹だ」


もう一体何が何だか。
だが取り敢えずカメラのスタンバイが完璧なので行くしかない。


「え~っと尊寅さん、一つ聞いて貰えます?」
「んー?」
「笑った方がいいのか厳つい方が良いのか…」

これは結構意見が分かれる。
赤林の言葉を尊寅が聞くと何か興奮しながら返事が来た。

「…流石外国人って感じの答えが来たぞ」
「何だ?」
「脱げ」
『「はっ?」』
「あ、茜は脱ぐなよ?」
「当たり前だ!どういう意味だ!?」
「『日本独特の刺青が見たい!』だと。形的に【太鼓】や【胸の控え】の事だと思う。刺青くらい和彫りで彫ってんだろ?」
「良く知ってますねそんな事…」
「……。尊寅、伝えろ」
「何だ」

どうやら流石に幹彌がキれたらしい。

「確かに彫り物はあるが、それをあえて見せねぇのが【太鼓】や【胸の控え】の…和彫りの美学だ」
「ふーん…。素直に『娘が恐がるから嫌だ』って言えないんだな」
「素直に言えばそうだ!あと何を勘違いしてんのか知ら無ぇがヤクザは見せモンでもお偉い指揮者を喜ばせるモンでもねぇよ!!」
「怒鳴ると茜がビビるだけだぞ」

怒鳴る幹彌をどうどうと諌める幹部二人に泣きそうな娘が1人。
そんなもんほったらかしで尊寅が話すと返事が来た。

「『日本の刺青の美学は分かった。ただこっちは既にコンサートと言う形で喜ばせた筈だ。怒鳴られる謂れは無いしその娘を怯えさせるのはもっと頂けない』、だとよ」
「幹彌さんを怒鳴らせる程の我儘を言ったのはソチラの先生様でしょうよ?」
「『だったら何故最初から拒否をしない?嫌なら嫌と言わないんだ。日本人は何故全員イエスマンなんだ?』」

そこで幹彌達、粟楠側が黙った。
言われたことに何も言い返せない。典型的な日本人の習性だ。


「負けだな。この人は世界回ってる。『言わなきゃ分からん・通じない』の世界の人間だ。ついでに紳士的だから父親のお前が怒鳴ったせいで茜が泣きそうな事にも腹が立ってる」
「っ、茜…パパが悪かった…」
「…うん…」

そこまで言うと尊寅が指揮者に何かを話し出した。
その言葉に憤慨していた表情がどんどん柔らかくなる。


「…よし、もう大丈夫だろ。写真撮って終わりだ」
「えっと尊寅さん?何を…」
「ん?別にこのまま喧嘩別れでも二度と会わないからいいが、日本へのイメージダウンも困る。だから取り持っただけだ」

さっさと全員並べと尊寅が指示を出す。

「表情指定は当然【笑顔】だ。笑えよ?」
「笑顔…」
「自分のコンサート聞いてくれたのに厳つい顔した記念写真なんかいらんだろ」






こうして写真撮影は無事に終わり。
言葉は分からないが指揮者の方がずっと笑顔なので和やかに退室した。

「さて、と。幾ら取ってやろうか…」

部屋を出た途端に尊寅のコレだ。
やっぱり頭の打算計算機は動きっぱなしだったようだ。

「その前に…お前あのセンセに何か言っただろ?いきなり雰囲気変わったしよぉ」
「オレがいい加減疲れたから終わらせたかっただけだ。帰りたいし。お前ら帰らせたいし」
「あんなに怒ってたのに何て言ったんです?」
「【日本は島国で閉鎖的だ。ムラ気質が未だに諸国より強い。にも関わらず最も文化に重きを持つ日本のヤクザに対して文化を軽んじた発言は怒鳴られて当然だ】ってな。幹彌のはそれで済んだ」

尊寅と赤林。
二つの杖の鳴る音が何やら新鮮だ。

「あとは【茜を寝不足にさせる気か?】で終わり。写真撮ってから笑顔だったのは言葉通じないから」
「どういう意味ですか?」
「誰でも【笑顔】が一番効く。まぁ、そもそも折角聞きに来て挨拶までしてくれたのに、そのトータル1日の終わりを気分悪くしたくないだろ」

コツっと尊寅が控え室の前で止まる。

「じゃあな。見送りはせん。今回は久しぶりにそっちの『お気持ち』にしとく」
「今日は随分と景気が良いですね?」
「この一件のせいであのコンダクターが二度と日本に来なかったり他の指揮者達に噂が流れたら責任持てん。規模がでか過ぎる」
「流石の尊寅さんでも引きを考えるんですねぇ?」
「自分の力量は弁える。オレはまだ『この世界』から追放も吊し上げも御免だ」


さっさと帰れ面倒臭いヤクザめー、と言って尊寅は控え室の中に消えた。
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プロフィール

寅丸

Author:寅丸
アニメが終わってからデュラの存在を知った可哀想な感じの人。原作しか知りません…orz。きっと静雄と派生が好きだと思う。ケロロは電波黄色と喧しい。10年目でいきなりハマった。なので【今更】。ピクシブ  呟き

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