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イマサラ

腐向け/R15/DRRR!!・K66・TIGER&BUNNY中心/いろんな妄想ダダ漏れな欲望全開。

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#12:絶望も希望も無い空に、欠落感と閉塞感。LACK.

万事屋さんが開業だよー。


『万事屋』


【前世の知識】も全て繰り越している為、相当違法な事も何でも出来るのでそんな仕事を始めたリンネ。

勿論カスな仕事はやりたくないので上客から仕事が回るように友人達に仕事紹介を頼んだ結果。


「……予想外に忙しいとは…」


ケータイをパタンと閉じて、リンネは手帳を見ながら溜息を付いた。




●#12●




『銀髪の少女』
その存在は今や当たり前のように池袋や新宿に浸透している。
勿論容姿もあるが、一般人ではまず話しかけたり出来ないような人種に平気で話しかけたり遊んだりしているからであり。
その上【一切正体不明】という付加要素も含まれている。
そんなリンネがまさか最近密かに噂になっている『万事屋』だとはまず誰も知らない。
その『万事屋』は依頼を何でもこなし、その上仕事の出来も実に良いと大盛況状態だ。
…ただし、人気と言っても【裏側の世界】の比率が圧倒的だが。


「はぁ~、くっだんない仕事も大金払ってくるバカが多いんだよなぁ…」

今日、一件目の仕事をこなしにリンネがバイクの後ろで溜息を付く。
運転しているのはデリックだ。子供のリンネでは足が届かない。大人の姿になろうにも、自給自足技なので貧血になって結局乗れない。
それに依頼内容によっては大人の男であるデリックが居たほうがやり易い事もあり、パートナーとして連れ回している。

「けど金の為にやるんだろ?」

赤信号で止まってるデリックが声を掛ける。
流石はボーカロイド。リンネのボヤキが聞こえたようだ。

「仕事内容自体は簡単だったしね。って言うか【紹介元がもはや誰?状態】になるのがこんなに早くなると思わなかった」
「いいんじゃねぇの?どんな依頼でもキッチリやるから信頼度も上がるんだしよぉ」
「もー、心境的には新橋の居酒屋に入って朝まで一人酒で延々と愚痴てたい…」
「相変わらずオッサン臭ぇなぁ…つーか嬢ちゃんもたまには休んだらどうだ?」
「自由業だからいつ仕事が来なくなるか分かんないでしょ?稼げるときに稼いどくの」
「へーへー、なら頑張れ。出すぜ」

本日二件目の仕事をこなしに目指すは池袋。
ターゲットは【平和島静雄】だ。
既に連絡は取ってあり、所要で直ぐ済むとも伝えてある。
ただ、静雄が『それ』に対して首を縦に振るかどうかは知らないが。




◆◇◆




池袋・某ファーストフード店。

「よっすー静雄―。トムトムも久しぶりー」
「おー。悪いな飯時で。お前も何か食うか?」
「自分で買ったから大丈夫。座っていい?」
「おぉ」

静雄とトムの取り立て屋コンビの昼食中にやってきたリンネ。デリックは目立つのでPCの中だ。
四人掛けの席だったのでリンネがトムの横にちょこんと座る。
そしてコーヒーとアップルパイの乗ったトレイを置いて、持っていたPCやケータイ複数が入った鞄をドサっと降ろす。正直疲れている。

「最近リンネも相当忙しいみてーだな?あんま無理すんなよ?」

座った途端、クテンとして食事に手をつけようとしないリンネ。
その様子に横に座るトムが心配そうにポンポンとリンネの頭を撫でる。
女っ気の無い乾いた空間に、子供ながらも一応女の子がやってきたので多少は虚しさが消える。

「記憶が飛ぶまで浴びるほど呑みたい…」
「よしよし、今度トムさんが付き合ってやんよ。だから【子供の時】に酒の話は無しな?可愛くねぇから」
「ちょーっとねぇ…情報拡散力がおかしい…」

嫌な顔をしながらやっとコーヒーに口をつけるリンネ。
そう、あまりにも『万事屋』の存在の広がり方が早過ぎるのだ。

「今は何処まで裏に深入りしてんだ?」
「粟楠とは仲いいよ?最近あそこのお嬢ちゃんの茜ちゃんのお世話係をやらせて頂いております。2時間だけどすっげー儲かる」
「粟楠会とか?!…どっからそんな…」
「もはや経由先不明。直接仕事用のケータイに来たもん。まぁ【粟楠会】って言うより【粟楠家】として仲がいいという事になってるけど……ねー静雄」
「んー?」

もふもふバーガーを食べている静雄にアップルパイを食べながらリンネが問う。

「これさぁ、やっぱ【ダラーズ】に情報流されてんのかなぁ?ガキのチームに興味無いからほっといたけど…」

ネット上でリークした奴は、どうせ一人しか居ない。
だがそれが分かっても、情報を流す理由が見当たらないのだ。誰にも利益など生まれない。

「どーだろ?俺もう抜けてっし、適当に入っただけだったからなぁ…」
「潰れて困る人がいなけりゃ潰しときたいんだよねぇ。大人の仕事の邪魔すんなら尚更、ね」
「でも門田やセルティはまだ入ってんだろ?つか、何かそう言う感じがすんのか?」
「しまくり。ダラーズに【万事屋】の事を流したとしたら犯人は確定してる。でもその犯人は金蔓だし、潰すとしたら大元からかなって」

表には出さないが、正直リンネはこの情報拡散力に対して激怒に近い程機嫌が悪い。
リンネはダラーズ創始者が『竜ヶ峰帝人』ということも、犯人が『折原臨也』だということも分かっている。
そうじゃなければ信頼している友人たちの紹介だけでコレほど自分が忙しくなることなど有り得ない。
とにかく【万事屋】としての番号の広まり方が異常なまでのスピードなのだ。

他人の掌の上で踊らされるのは、リンネが一番嫌いな事だ。


「おいおい、何か物騒だけどよぉ。一応証拠はあんのか?」
「あるよ。【情報屋】のPCを覗いて確実に法律に引っかかる方法をとったお陰でデータは揃ってる。もうぶっ殺しといた方がいいかなーって…」
「蚤虫なら俺も混ぜろよ?」
「違ぁう。ターゲットは創始者の方。誰か【ダラーズを潰せ】とか依頼くれないかなー、と思う日々だよ」
「リンネぇ、お前あんまり堂々と言わねぇ方がいいべ?今ダラーズも変わってきてるし、誰が聞いてるか…」
「襲って来てくれた方が手間が省けるよ。入らなくたって臨也のPC見れば情報筒抜け。あんまりオイタが過ぎれば自分で動く」
「気になるならリンネが入会した方がもっと情報入るんでね?お前、名前も売れてっし歓迎されんだろ」
「直接数人を潰した方が、早いよ」

ニッコリと可愛い顔でアップルパイを食べながら喋る内容では絶対無いが。
子供が(見た目はリンネの方が更に子供だが)自分の仕事に絡んでくるのがどうにもストレスなのだろう。と、トムはそう言う事にしておいた。
ついでに死人が出る前に早めに酒に付き合ってあげようとも決めた。


「ま、ガキのネットワーク潰しは置いといて。愚痴ってごめん。仕事に入る」

全部食べ終えて手を拭き。
リンネがゴソゴソと鞄から荷物を取り出した。

「そんでね?静雄にお願いなんだよコレ」
「あぁ。俺にって何なんだ?」

相変わらず『何故シェーキからキュイキュイという音が鳴るのか』、そっちが不思議で仕方が無いリンネだが。

「静雄ってさぁ、結構自分にシンパがいるって自覚有る?」
「シンパ?」
「あぁ、言い換えるわ。信者さん。『静雄さん超かっけー!!』的な人たちの事。『静雄は俺の嫁!』みたいな」
「……悪い、あんま良く分かんねんだけど…後半の『俺の嫁』の件が特に」

本当に不思議そうな顔をしている静雄に、リンネは笑顔のままで静雄に見えないようにトムの服をガッ!!と鷲掴む。
冷や汗が出るのはトムの方だ。
リンネは静雄には通じないのでそこそこ甘いが、常識のしっかり通用するトムには攻撃こそしないが静かに圧力を掛ける事が多い。

「トムトム、次までに静雄にもうちょっと二次元な事を平均値まで上げといてくれるかな?会話が疲れる」
「いや…この『無知っぷりだからこその!』ってじゃねぇかなぁ…と、思うんだけどなぁトムさんはぁ…」
「むっ、まぁそう言われちゃそうか…難しいなぁ静雄は…」
「何だよ?俺なんかしたか?」
「何もしてないよ大丈夫。君はそのままの君でいて」

まさか目の前でトムがリンネから脅しを食らっているとは気付かない静雄。
これもまた、トムが気づかせないように精一杯だ。
気付かれたら【池袋最強vs.新宿の破壊神】というとんでもない対戦カードになりかねない。
取り敢えず、この店は確実に吹き飛ぶ。

「何か俺だけ会話に置いてけぼりだけど…」
「まぁいいから。それで、さっきの前半は理解してくれてるんだよね?後半は切り捨てでいいから」
「あぁ…信者?つかそんなん俺にいねーだろ。蚤虫担当じゃねぇの?」
「それは違う。人間誰しも強い男には無条件で憧れを持つ者なんだよ。それが【規格外で都市伝説的存在】な静雄なら特にね」

リンネが肩肘を突きながらシュガースティックをピシっと静雄に向ける。
そしてニッと笑う。


  「って事で、このサングラスを掛けてくれたら仕事終了」
  「はっ?」


リンネが差し出したのはいつも静雄が付けている蒼いサングラスと同じ物だ。

「何か今回の依頼人、静雄シンパさんでさー。『静雄の私物が欲しい』とか言われちゃったもんで」
「俺の私物?」
「そ。まぁファンみたいだよ?正直【静雄のバーテン服一式】とか言われたけどそれは流石に無理だから却下して、まぁサングラスならいいんじゃない?みたいな」

いまいち理解出来ていない静雄と、完全に理解してしまったトム。
そんなトムが嫌そうに小声でリンネに口を開いた。
勿論静雄に聞かれて不味いし理解されたらもっと不味いからだ。

「…なぁその依頼人、男か女かどっちだ?」
「残念ながらメンズです」
「うっげマジかよ?!まさか手に入ったら静雄の服でハァハァとか考えてたのかソイツ?」
「いやー、依頼人の事はあたしも詮索しないんだけど、ウザイ情報屋がソイツの情報を勝手に人のケータイに突っ込んできて超萎えた…」
「どんなんだ?」
「結構な勢いで静雄を好きみたい。抱いてくださいレベルで。でも近寄れないじゃん?殺されるから。だからあたしの登場」
「はぁー。まぁ静雄に近づけねぇってのは分かるけど…世の中物好きも多いのなぁ」
「あたし、静雄シンパが影で多いのに吃驚したよ。キモイから早く終わらせたい」
「まぁそうだわな。…ってか終わりだ。静雄悪ぃ」
「えっ?」

取り敢えずヒソヒソ話を終わらせてみれば、静雄が何やら寂しそうな顔でコチラを見ている。

「あー!別に静雄を仲間外れとかじゃないから!!そんな顔しないでゴメン!!」
「別に何でもねぇよ…。お前トムさん好きだし邪魔しねぇって」
「もー拗ねないでよぉ。今度一緒にスイーツツアーやろ?あたし一日【大人】になるから。ね?スイーツデートしよう★」

リンネの言葉に静雄の表情が嬉しそうになりコクンと頷く。機嫌も相当戻ったようだ。
最近リンネは静雄は【スイーツ】と【自分が大人になる】のダブルコンボで機嫌を戻せると知った。
勿論大人になる為の血は静雄提供なので本人が貧血になるだけなのに、どうにも【大人の自分】がお気に入りらしい。
毎回(オバサンなんだけどねぇ?)と、理由はリンネにもよく分からないが。


「って事で静雄。そのサングラスを掛けて、ついでに指紋なんかも付けてくれるとありがたいデス」
「でもよぉ、コレ新品だろ?リンネが持ってきたなら俺の私物じゃねぇし…」
「大丈夫、【静雄が使った】って言うのが大事だから。それか今静雄が持ってるのとコレと交換とかでもオーケー。むしろソッチのが助かる」
「………。何か不思議な世界で仕事してんだなお前?ホレ、やる」

そう言いながら静雄は自らのサングラスをリンネに差し出した。
それをリンネが他に汚れのつかないようにメガネケースに入れさせ、密閉袋に入れる。


  「はい、ご協力感謝!!!」


満足そうにリンネがニッコリ笑う。
コレだけで桁違いな金額が入るのだ。世の中おかしい。

「じゃあコッチのは俺が貰っていいんだよな?」
「うんいいよ。メーカー一緒でしょ?」
「何か新品貰ったみたいで悪いな」
「気にしない気にしない。用意したのはあたしじゃないし。あたしはコレが今回の仕事だからね」
「けどお前、プライド高ぇし下手な仕事しねぇだろ?」

静雄の問い掛けにトレイを持って出ようとするリンネが笑う。

「安い仕事を回したヤツには【東京湾を一生清掃活動】の終わり無き地獄行きだから。あたしの【友達】にそんなバカはいないでしょ?」

こうしてリンネは席を後にした。


「……トムさん、つまり?」
「【報酬の少ない・またはリンネ的にすげーアホ臭い仕事を紹介したら、紹介元ごと半端無ぇ制裁を食らう】っつー事だべ。まぁ依頼人ごと砂に埋められるってこったろ」
「ふーん…。でも今回の『俺のサングラス』とか…何で引き受けたんだろ?」
「そんだけ儲かるんじゃね?お前のサングラス。つか、沈めるより清掃活動の方が確かに辛ぇわ…エグイなアイツ…」
「何処でも売ってんスけどねぇ?」
「ま、いんでね?それより午後も頑張ろうや」
「ッス」

理解されてキれられても怖いので、トムはさっさと会話を流した。












リンネが次にやってきたのはとある画廊だ。
最近部屋の壁に何か浮かび上がって見えるのが怖くて絵を買いに来た。
子供が中に入るには随分敷居の高いような場所だが、リンネは平然と入っていく。
そして入ってこられた店員達が逆に吃驚するという状況に陥った。
子供が一体なんのようなのだと。

「あの…」

そもそも客かすらも怪しいのでどう声を掛けていいか分からない。
それでも一応リンネの側に接客用の笑顔で立つと。


  「ねぇ【四木】呼んで?今日ココにいるはずなんだけど」


その一言に店内は一気に殺気に満ちた。
ここは粟楠会がカモフラージュで立てている画廊だ。
そこに幹部である四木を呼び捨てにして、しかも当たり前のような顔をしている少女。
何者なのか分からない。
一般人なのか、四木の知り合いの子供なのか、果てはどこぞの暴力団の鉄砲玉か。
とにかく堂々とし過ぎている。

「……。別に睨むのは勝手だけど、四木いるんだろ?時間に合わせて来たんだから早く呼びな。コッチは約束付けてんだ」

銃を向けられているのも、敵意満載な中でもリンネはただ平然と絵を見て歩いている。
ただ、言葉は全員の背筋を粟立たせるには十分の『重み』を持っている。
どう動いていいのか分からないのか、全員が棒立ち状態だ。

「そんなに耳が悪いなら全員耳鼻科行きな。【リンネが来た】って言えば四木に通じる。さっさと動け」

リンネは本邸で茜の遊び相手もしている。
頻繁に出入りをしているのだが、あくまでそれは【粟楠家】という家であり【粟楠会】の事務所ではない。
なのでリンネの事を知らない組員も当然多いわけで。

「…おい嬢ちゃん。テメェ大人ナメてっと痛い目合うぜ!?」
「粟楠会って分かってんならどうなるかも分かってのか!!あぁ?!」






   数分後。






「ったく情けねぇ…」
「躾がなってないよ。四木の手下らしくない。会話すら通じないんだもん」

画廊からの騒ぎに降りてきた四木が見たものは。
無残に転がる自分の部下達を冷めた目で見下しながらカウンターに座っているリンネの姿だ。
勿論全てリンネが打ちのめしたのは分かっている。

「なんだろ…。やっぱ本邸通いだからかなぁ?久しぶりに礼儀の無い雑魚に出会って新鮮。コイツら粟楠会の名前だけ振りかざしてるだけのチンピラ?新人?」
「相当嫌な思いさせたみてぇだな。悪かった」
「『いらっしゃいませ』すら言って貰えなかったあたしの悲しさどうにかしてよ…超ショックなんだけど…」

不満げに言葉を吐き出すリンネの表情はこれでもかと冷たい仮面を付けている。
リンネが【子供ではない】事に感づいている者はまだ極少数だが、いる事は確かだ。
幹部に対しても若頭の幹彌に対しても会長の道元でさえ、リンネが物怖じした事は一度としてない。いつでも堂々としている。

「まぁ…取り敢えずコイツらはさっさと履けさせる。ちょっと待ってくれ」
「はーい。絵に血がついたら困ると思って転がしただけだから一応生きてるよ」

淡々と言う少女に四木は直ぐに事務所の部下に片付けさせる。


「ったく怖ぇ事言うなよ。もっと子供らしくなる努力したらどうだ?」
「えー?四木の方が怖い癖に。あとでアイツらをどうやって始末するか考えてんでしょ?」

クスクス笑うリンネが手を差し出す。それを合図に四木がリンネを片手で抱き上げる。
既にいつも茜に見せている子供らしい笑顔だ。
リンネの視線では低くて絵がちゃんと見えないというのを汲み取っている。



「んじゃ、お客様。今日はどのような絵をお望みで?」

既にいつも通りの画廊に変わり、先程までの不躾な者たちの代わりが数人立っている。
あの粟楠会幹部が会長の孫娘である茜ならともかく、子供を相手に同等に扱う事などまず無いがリンネは完全に別格だ。
それは粟楠会の中でも言える。リンネは『誰とでも同等』なのだ。

「まぁ絵の前に【臨也の報告】でも聞く?」

そう、【折原臨也の存在】は粟楠会では四木の管轄に入っている。
リンネは同居しているのもあり、特に臨也がどうなろうと家が確保できればどうでもいいので四木と繋がっている。
そこまでは臨也が先にリンネに四木を紹介したので臨也も知っている。
ただそこからリンネが今、粟楠会でどのような扱いを受けているかは何処まで知っているやら。
全てを知ったら紹介したことを心の底から後悔するだろう。

「また何か下手に動こうとしてんのか?」
「まぁ今は新しいオモチャを探し中って感じ。個人的には【ホッキョクグマと素手で戦わせたい】気分だけど」
「何かあったか?」
「ちょっとねー。ある意味『営業妨害』にあってる。未だにナメた真似するからねぇあのガキ」


その時、リンネの仕事用のケータイが鳴った。

「んー何だよもう!!四木とのランデブーを!仕事ケータイ!!カバンカバン!!!」
「はいはいお嬢様。降りるか?」

リンネの鞄を取り上げて渡し、四木が尋ねる。
この体制では会話は丸聞こえだ。仕事用なら聞かれて困る事もあるだろう。

「気分がイイからこのままで。てか仕事ブチ切ろうと思ったら粟楠の事務所から」
「組から?」
「うん…何だろ」

リンネ自身も不思議そうな顔で通話ボタンを押す。

「はい、名前と仕事内容を。……はっ?何それジョークだよね?そう言うのは部下に頼んでよ…って言うかコッチは仕事の番号だよ?何故今そんなどうでも良い事で掛けたし!!」

ゲンナリと嫌そうなため息混じりのリンネ。
勿論四木には相手の声が聞こえている。誰からか、分かっている。
だからこそ、改めてこの娘が恐ろしく感じた。


「道元さぁ、会長さんなのに何であたしにそこまでフランクかな…、いやまぁそれは人の事言えないケド……えっ!ヤダよ何で『ジージ呼び』!?それ今後から強制!?」

電話の向こうは粟楠会会長・粟楠道元だ。

「ん?今は画廊に来てる。四木とラブラブ中なの!!だからこそ何故掛けたし!?」

相当この時間を邪魔された事に腹を立てているのか。
真横でリンネの大声は中々の凶器だ。四木は耳が痛い。

「……あぁ、はいはい。良かったちゃんと仕事の依頼ね。違ってたら縁切ろうかと思ってた。…いや、これ本音だかっ…ん?はーい。ねぇ四木代われってー」
「俺?」
「うん。『身近にいる一番偉い人』。四木じゃん?」

そう言ってリンネの差し出すケータイを受け取る四木。
リンネは聞く気は無いようで、四木から飛び降りて絵の探索を続けている。
二三言葉を交わして、四木はケータイを閉じた。

「終わったぜ。これから迎えの車が来る」
「えー、今からなの?…じゃあデリックにバイク乗って帰さないと…。もー、今日は仕事しないつもりだったのに我侭な爺ちゃんなんだから…」
「仕事の選り好み出来る立場かよ?」

その言語に、リンネがニッコリ笑う。

「大盛況に付き、選り好みは十分出来る立場です」




◆◇◆




粟楠会・本部事務所。
車から降りてきた少女に組員たちはほぼ全員がぎょっとしたと言ってもいい。
何故こんな子供が来たのか。反応は画廊の時と同じだ。
だがあまりに堂々としているリンネと横にいる『四木』という存在に、誰も何も聞くことすら出来ずにいたら。

「おぉリンネちゃん来てくれたかい。おいちゃん達待ってたよ」
「あ、赤林じゃん!」

そこにはこれまた幹部の一人である赤林だ。
何時もと同じく派手な柄のシャツに色眼鏡にステッキだ。

「もう会長の部屋に皆集まってるから迎えに来たよ。四木さんもご苦労様です」
「いや、赤林さんこそわざわざ」
「二人とも喋りがジジ臭いよ…」
『「大人の社交辞令」』

揃って言う二人にリンネが笑う。
赤林は普段とあまり変わらないが、四木は相手や状況によっては言葉が相当キツイ。

「もー、息ぴったりだよねー。じゃあもういつも通り喋ったらぁ?」
「部下の手前だ。ダラけて喋れるか」
「分かってるけどさー。ま、好きな二人のエスコートだからあたしは満足だけど。赤林運んで~」
「こりゃまた我侭っ子なお嬢様だねぇ」

そう言いながらも赤林は飛びつくリンネを抱き上げて歩き出す。
そして手下も疎らになった頃、漸くしゃべり口調が砕ける。

「リンネちゃんってこないだ『四木の旦那が好きだ』って言ってなかったかい?」
「そだよ?あたし四木の事好きだもん。顔的な意味でも超好き!でもさっき抱っこしてもらったから今度は赤林」
「お、顔が好きとはまた嬉しいこと言ってくれるな?でも俺だとリンネの父親で通るだろ」
「ノンノン。違うんだなぁ」

訝しげな四木にリンネが楽しそうに指を振り話し続ける。

「あたしねー、オジ様が好きなの。青臭いガキより渋めのオ・ジ・サ・マ!四木って結構ストライク。で、実は赤林も好きなわけだ!!」
「そりゃー…また随分物好きとしか言いようがねぇ感じだな。俺は年下も大丈夫だがリンネはどうにもお嬢とダブる。犯罪だろ」
「おいちゃんは嬉しいけどねぇ。さて困った。こんな若いうちから二股は良くないよ?」
「そうなの。今みたいに若干四木にはフラれ気味なのは感じてるのね?でも赤林一本に絞るのもなんか怖いから。ま、望むは両手にダンディなオジサマです!」
「こりゃまた逆ハーレムでも築くつもりかい?あとは誰をターゲットに?」
「んー、青崎は未だにあたしの事ガキ扱いするしぃ。幹爾は嫁子持ちじゃん?流石にそこに横槍入れる趣味は無いしさぁ…」

ベラベラと楽しそうに話すリンネ。

「こりゃ将来、随分な悪女になっちまうんじゃないかい?怖いねぇ今の子供は…」

言い方はいつものヘラヘラだが、結構本音だ。
こうして幹部二人を両手にオジサマで大変満足なまま、リンネは会長室まで抱っこされたままで入る事になる。
勿論リンネが降りないからだ。無理やり剥がそうとすれば服を丸ごとビリビリにされて素っ裸にされる。


「失礼します。リンネを連れてきました」

ガチャリと開ければ、そこには粟楠親子に青崎に風本。
全員が「あー、また何かやってらぁ…」と、極力スルーの方向であまり気にしないようにしている。

「やっほー道元!今日仕事する気無かったけど今超ハッピーだから受けるよ。何?」
「ホント赤林と四木がお気に入りだなお前は…」
「いい男を横につかせるのも女のステータス。つか道元からの直電も吃驚したけど正直かなりイラッと来たのは本当だからね?何であたしが聖辺ルリ特集の雑誌を買いに行かなきゃいけないんだっつの」
「冗談だろうがよぉ。だから謝罪の意味でも両方くっつけさせてんだろ?ハッピーならいいだろ?」
「つーかこの組さぁ、聖辺ルリに相当汚染されてるよね…」

リンネの一言に部屋の空気が変わる。
そして特に風本の視線が一気にキツくなる。

「まさかお前アンチか?だったら中にいるのキツイぜ?」
「いや、普通の女優さんだなーってくらい。ファンになるほどでもアンチでも無いからそんなに睨まないでよ風本怖いって。ありがとね赤林」
「まぁおいちゃんの抱っこで機嫌が良くなるならいつでも構わないよ」
「欲を言えば付き合ってください赤林先輩昔から好きでした」
「ん~、今のは聞こえなかったねぇ」

リンネがようやく赤林から飛び降りて、道元と幹爾の座る応接椅子の対面に座る。

「チッ、まぁいいや。んで?何で親子揃ってんの?まさか『聖辺ルリを攫ってこい』とか言う組を上げての大捕物?」
「面白そうだからやってみてぇけど、他のファンが可哀想だろ?つか何で画廊なんかにいたんだ?」
「ん?絵が欲しかったから。理由は聞かないで。聞いたらあたしは茜ちゃんの仕事を辞める」
「それは困るから聞かねぇよ。茜もお前が好きだからな。変な入れ知恵すんのさえ止めてくれりゃもっと報酬出すのになぁ」
「可愛い悪戯でしょー?てか仕事ってホントに何?こんなにお偉いさん集まっちゃって。『明日機』関連なら高く付くよ」

『明日機』という単語に反応したのは全員だ。
完全なフリーであるリンネは明日機組からも仕事を受けている。そして向こうでの立場はここと同じような状況なのだ。

「まぁ取り敢えず、『あたしにとって下らない仕事』だったらいくら赤林や四木って言うお気に入りがいようと…」

ニコッと笑ったその直後。


  「本気で怒るからそこ弁えて口開きな」


会長の道元でさえゾワリと背筋が粟立つほど、全てを瞬間冷凍させる液体窒素のような声と瞳。
これが【リンネ】という存在に仕事を託す『覚悟』だ。











「頼めるかリンネ?」

道元の依頼内容をリンネは静かに聞いていた。

「……、正直に言う。現段階でのあたしの情報網じゃ、確実に見つけ出す事は不可能だ」
「ならコッチが目撃情報を渡せば追って捕まえられるか?」
「いや、それも無理だね。目撃する事自体がまず無理に近い」

珍しくお茶を濁すリンネ。


  「まさかの『澱切陣内』とはね…」


いつもなら何でもホイホイ簡単にやってのけるくせに、渋ったのは始めてだ。
嫌な顔をしながら紫煙を吐き出している。

「お前がそんなに嫌がるのも珍しいな?」
「あぁ、相当複雑に絡み合ってんだよ澱切は。消すも沈めるも人様に迷惑はしないが、粟楠会が思っている程ヤワなレベルの問題児じゃない」
「って事は俺達よりも相当な情報は持ってんだな?」
「【情報屋】からとその他色々だよ。けど臨也も澱切には一発食らわされた身で慎重だ。ほぼ関係性は掴んじゃいるが。まぁ…単純に神出鬼没なんだよ」
「受けるか受けねぇか、ならどっちだ?」
「今後粟楠会には手ぇ出す確率は極めて低い。元から粟楠会は巻き込まれただけでアイツの商売にはなんの関係も無い」
「答えになってねぇぜリンネ」

幹爾の言葉にリンネが溜息を付いて肩の力を抜いた。

「ヤツは敵が多い。多過ぎるんだよ…」
「あ?どういう意味だ」
「【アイツを殺したいヤツがあたしの身内にも多い】って事だよ。散々な目に合わされてる。正直運良く取っ捕まえたとしても、粟楠会に引き渡すより身内に渡してあげたいとも思ってる…」
「だがこっちは依頼だぜ?俺達だって身内を殺られてる。金も弾む」
「分かってるよ…ソッチが利用されて家族を殺られて怒ってんのは。けど今回は保留にしてくれないかい?もし見つけたとしてもその時の判断で粟楠会に引き渡すか分からない」
「その恨みのある身内に渡しちまうって事か?お前が私情を挟むなんざ相当だな」
「あぁ…相当だよ…」

リンネの瞳が薄くなる。


「あたしがそのまま殺っちまう可能性が一番デカい」


その声は氷の刃のように全員に突き刺さる。
そして傷口が業火のように熱い。

「大嫌いだからね…」


リンネの言葉に道元が言葉を出す。

「…分かった。そこまでなら無理にとは言わん。ただ殺したなら殺したでそれは教えてくれ」
「悪いね道元、幹爾…。身内被害は、贔屓目無しでコッチのほうが深刻な上に現在進行形だ…」
「お前も随分な身内が多いからな。殺したら死体くらいはくれよ?」

その言葉にリンネが薄く笑う。

「ありがとう」









「澱切についてはリンネちゃんの方がおいちゃんたちより良く知ってるみたいだねぇ?」

帰りの車の中。
リンネが勝手に倒れてきて膝枕状態になっているので、赤林は髪を撫でながら尋ねる。

「もー、その話止めよう。ホント頭痛いんだよあのオッサン。ブッ殺したいヤツも多すぎて誰に引き渡しても誰かに恨まれる…」
「そりゃいけねぇ。それに可愛いお嬢ちゃんがそんな暗い顔をすんのはもっといけないねぇ。何か欲しい物あるなら買ってあげるよ?」
「なら『赤林』の苗字を頂戴」
「おっと、四木の旦那はいいのかぃ?」
「だって四木、硬派って言うか振り向いてくれないもん…。まぁそれも含めて好きなんだけど。赤林は優しいし遊んでくれるのにさぁ」
「おいちゃんそんなに軟派に見えるかねぇ?」
「ん~、軟派って言うか女子供に優しいじゃん?赤林の人生の転機って凄いしさ。良くソコまで性格変わったよねぇ?」


   クスクスとリンネが笑う。
   どうしてリンネがそんな事を知っているのだ。


「…あんまり情報屋のあんちゃんに変なこと吹きこまれちゃいけないよ?アイツは信用し過ぎちゃいけないからねぇ」
「別に『コレ』は臨也も知らない事だと思うよ?情報屋は臨也一人じゃないし、情報発信が必ずしも情報屋からって言うこともない。それにちょっと今嫌いだし」
「おや、喧嘩でもしてんのかぃ?まぁリンネちゃんのがオールマイティに強いけど、顔なんかに怪我は悲しくなるからしないようにしておくれよ?」
「女の子に手ぇ挙げるような男だったら赤林が許さないでしょ?女の子の味方だもん」
「まぁおいちゃんが代わりに殴りに行ってもいいけどねぇ…多分到着前にリンネちゃんに酷い目に合わせられてておいちゃん出番ないだろ?」
「かもしんなーい。あーもー疲れたしどっかで美味しい物食べて帰りたーい!!赤林のオススメとかで一緒にご飯しよ?」
「おっと、こりゃ残念なことに今日のおいちゃんに『同伴』はオプションに付いてないんだよねぇ」
「ケチー。こんなに可愛い女の子からのお誘いを断るなんてどんだけよ?」
「また今度埋め合わせするから許してくれないかい?一応おいちゃんも粟楠会の仕事があるから」

ムーっと拗ねるリンネに苦笑する赤林。
始めて会った時には一体何者かと思い、今でも図々しい事この上ない我侭小娘だが。
四木が感じているように、やはり赤林もリンネを子供とは思っていない。この娘には相手を見透かす何かがある。


「あ、そうだ赤林」
「ん~?」
「聞きたいんだけどさ、【ダラーズ】って潰しに掛けて良いと思う?」

ダラーズは赤林自身も利用している。
使いようによっては相当便利だが、最近池袋の表裏をおかしくしているのも確かだ。

「いきなり物騒だねぇ。リンネちゃんがあんなのに目ぇつけるってどうしたんだい?」
「ちょっと個人的にウザいの。コバエはさっさと始末したい。まぁ壊滅させて誰か困るかなーと。困らないなら潰そうかなーって」
「って事はもうどうやって潰すか目星は立ってんのかい?」
「要点押さえて最低限、誰を【殺せば】二度と復活出来ないかくらいはね。最近動きがおかしい。粟楠会としてもガキのたむろはウザイでしょ?」
「ん~、殺すなんて物騒なことも『万事屋さん』のやることかい?おいちゃん可愛い子がそんな事言うのは寂しいねぇ」
「じゃあ結婚して」
「女の子はもっと身持ちを固くしないと。今度時間出来たら美味しい飯屋に連れてってあげるから勘弁してくれないかねぇ?」



そんな殺伐と冗談恋愛とが混ざり合った変な会話が続く。
今日のリンネは何処かおかしいのを赤林は感じていた。
単純にいえば、苛立っている。もう少し深く言えば…
殺気立っている。




「ほんじゃ付いたよ」
「ん、ありがと。澱切の件は道元達にホントにごめんって言っといてね?」
「なぁに、会長も分かってらっしゃるよ。そんなに心配せずにゆっくり休みな。仕事もあんまり頑張りすぎずに、少しは休んだほうがいいと思うよ?」
「そう…だね。うん、じゃあね」

そう言ってリンネはその場を後にした。

「…澱切単品への殺気とはちょっと違ぇな…」


  リンネから感じた殺意。
  個人一人へのものとは違う。
  【ダラーズ】にか?


「はぁ、あんな小さな嬢ちゃんが人を殺すのなんだの。嫌な世の中になっちまったなぁ…」
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寅丸

Author:寅丸
アニメが終わってからデュラの存在を知った可哀想な感じの人。原作しか知りません…orz。きっと静雄と派生が好きだと思う。ケロロは電波黄色と喧しい。10年目でいきなりハマった。なので【今更】。ピクシブ  呟き

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